14 ごげかがむがし

  むがしあったけど。
 あるどごろになー。米 (よね) 福 (ぶぐ) ど糠福ていう二人の娘ぁいでぁったど。米福ぁ先妻の 子で、糠福ぁ後妻の子でぁったど。
 ある時 (づぎ) 、二人ぁ山さ栗拾いんえたど。その時、継母 (ごげがが) ぁ、先妻の米福ぁどさば、 なんぼ拾たてたまらねぁ、切った袋持 (たが) がへで、我が子さば、ええ袋持がへだけど。
 ほうして二人ぁ山さ行て、栗拾いしたど。んだて、先妻の子ぁ、なんぼ拾たて 溜らねべ。んだはげ家さ行げば、母さんにごしゃがえんだし、なんとしたらえん だがどもて、沼のほどりさ行て、悲しぐなて、さめざめど泣 (ねあ) っだど。
 ほうしたば、ほごの大っき沼がら、ぶぐぶぐど泡出できて、大っき蛇体 (じゃんであえ) 出は てきたけど。ほうして、ほの大蛇、
「米福米福、俺ぁ今、この沼の主んなてんども、お前の母さんだぞ」
 ていうけど。ほんで米福ぁ、
「俺ぁ家の本当の母さんだごったら、ほんた大蛇のようだ姿でなの出はらねぁで、 元通りの本当の母さんの姿んなて見 (め) へでころや」
 て言 (ゆ) たど。ほしたば、ほの蛇体、ずぶずぶ沈でえて、こんだ本当の元通りの母 さんの姿んなて出はて来たけど。ほうして、
「ある時、殿さまの歌の会あっさげぁぇ、ほん時こういうに歌えばしほれがら、 お前どさ、宝物 (おの) の小袋さづげっさげぁぇ、これ人のいねどごで、とんとんとぶつ けっずど、さまざまの自分どさ合うええ着物ぁ出はてくっさげぁぇ、ほれ着て、 殿さまどさ行て、お前歌てみろて言 (ゆ) わっだら、
    ばんさらや ばんさらや
    さらちゅう山に雪降りて
    それを根として 生える松かな
 て、歌えよ」
 て、教へだけど。ほうして、
「お前どぁど何時会えるがわがらねぁ」て別っで行たけどは。
 ほうして、別れっ時、袋直してもらて、米福ぁ、ほの袋さえっぺぁ栗拾ろて、 家さ行たけど。
 そうしているうづん、殿さま歌の会開ぐはげぁぇ集 (あづ) はれて、ふれまわてきたど。 ほんで糠福ぁ立派な着物着かざらへでもらて、出はて来たけど。んでも、継母ぁ、 先妻の子なのなんた格好して行たてかもごどねぁかんじょしていだら、ほれごそ 立派だ着物がらなにがら整 (とどの) えで、着て出はて来たけど。ほうして無事殿さまのど さ行たど。
 ほうして、殿さまの前 (めあえ) で、歌よむごどんなて、いよいよ米福の番さきたけど。 ほんで米福ぁ、
    ばんさらや ばんさらや さらちゅう山に雪降りて、それを根にして、
    生える松かな
 てうだたど。ほうしたば、殿さますっかり感心して、
「お前、これくれぁ上手 (じょん) だば、あどの娘もなんぼ上手だがわがらね。糠福、しと づ歌てみろ」
 て言 (ゆ) わっだど。むがしぁ、学もなにもねぁおんだし、糠福ぁ、自分歌ぐれぁぇ え歌ねぁおんだどもて、
    けぁぇ餅三べぁぇでらっと食って、薮さつっと投げだれば、
    鴫 (すぎ) ぁばったり 立ったりや
 て歌たど。ほうしたば、そごさ並でだ人 (し) 達 (だづ) ぁ、皆あっつでもこっつでも、くっ くっ、くっくっつ、ておがしがて笑てっけど。ほんで、糠福ぁ殿さまの前で、た だ恥かいでしまたけどは。
 米福ぁ、その後、殿さまさ仕えるごどんなて、仕舞 (しめあえ) にぁ、殿さまの奥方んなて 末長ぐ幸福 (しっしやわへ) ん暮したけど。とんぴんからんこあぁねぁっけどは。
(話者 中川チャウ)
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