13 ごげかがむがしむがしあったけど。あるどさなー、かがに死なっで、娘一人 (しとり) ど二人 (したり) 暮しの人ぁいであったどー。ほ の人ぁ、自分 (おわ) 女子わらすさかもてっど働げねぁぐなるおんだはげぁぇな、継母 (ごげかが) も らたど。 ほうしてなー。二、三年もすっど、継母ぁ自分連 (つ) できた女子わらすばりめんご くて、先 (さぎ) のかがのわらすこぁどごぁいじめでばりいんなだけど。 ある時 (つぎ) 、秋んなて栗拾ろう頃、継母二人ぁどさ、栗拾ろてこえて言 (ゆ) たけど。ほ うしてなー。先のかがぁわらすこどさ、底さ穴の開 (あえ) っだはぎごやて、 「ゆき。お前 (んつ) あ、このはぎご持て行 (え) げ。ほうして、先ん立て歩 (あり) げ」 つけど。ほうして、自分連できたわらすこぁどさばええはぎごやて、 「そで。お前、ゆきぁ後んなて拾うて歩げ」 つけどやー。 ほうしてなー。二人ぁ山さ行 (え) たど。二人ぁ栗 (くん) ぬぎのあっどさ行て、ゆきぁ先ん なて、そでぁ後んなて拾ろい始めだど。ほうして、ゆきぁ拾ろてはぎごさ入 (へ) っだ ば、ぽたってはぎごがら落ぢる音ぁするよんたずおん。ほんで、ゆぎぁおがしど思 (も) て、まだ拾ろて入だば、はぎごさ穴開 (あ) でで、ほんで落づんなだけど。これだば駄 目だていうなで、底さ柴なの草なの入 (へ) で落ぢねぁよんして拾ろたど。んだおんだ んだはげぁぇ、そでぁ、ゆきの後ばりつでありたおんださげぁぇ、さっぱり拾い かねぁで、ゆきばりえっぺぁ拾ろて家さ行たど。 ほしたば、継母、 「ゆき、なんぼ拾ろてきたや」 て聞ぐけど。ほんでゆきぁ、 「みろー。これぁ、はぎごさえっぺぁ拾ろてきた」 て、はぎごつだしたけど。みだば本当 (ほんとん) にえっぺぁ入 (へ) ったべ。ほんではぎごがら あげでみだど。ほしたば、底がら草など柴なの出はてきたけど。ほんで継母、は ぎごの穴みつけらっだなど思たども知らねふりして、自分わらすこぁどさ、 「そで、お前 (んつ) ぁなんぼ拾ろたや」 て聞だど。ほしたば、そでぁ、 「二 (したつ) つ、三つはんて拾ろわねぁ」 つけど。ほしたば継母ぁ、ゆきぁどごにらみづげで、 「ゆき。自分 (おわ) ばり拾ろて、そでぁどさ、さっぱり拾ろわへねぁづぁねぁべな」 て、ゆきぁどごばり、しこでぁまごしゃぐなだけどやー。 ほうしているうづん、秋ぁ過ぎ、冬も過ぎで、春んなて、わらびぁ出る節 (へづ) んな たど。ほうしたば継母ぁ、二人ぁどさわらび採りん行てこえつけど。ほうして、 「ゆき。お前 (んつ) ぁそでぁ後立て歩りげ」 ていいづげでやたど。ほんでゆきぁ、そでの後んなて山さえたど。 ほうして、そでぁ先んなて歩りたおんだはげぁぇ、朝つゆん濡ってしまて、わ らびの出っだどごまで行がねぁうづん、だらくされなて、寒みぐなて、いらんねぁ ぐなて、途中がら家さ帰 (けあ) えてしまたけどは。んだおんだんさげぁぇ、ゆきばりわ らびえっぺぁ採て帰えたど。 ほうして、ゆきぁ家さ行たば、継母しこでぁまごしぇでいだけど。ほうして、 「ゆきっ。なえの話だ。そでぁどごばり先ん立ででだらくされんさへでっ。風邪 でもひがへだらなんずするつもりだ」 て、箒でゆきぁどご、ばえんばえんどたでぁだけどー。 ほうしているうづん、二人ぁ年ごろんなたど。ほしたばゆきぁ、とでも奇麗 ん なたけど。んだおんだんさげぁぇ、長者家 (え) の息子ぁ、ゆぎぁどさ惚れだけど。 ある時、継母ぁ、ゆきぁどご田打ぢんやたど。ほうして、男 (おとごし) 達 (だづ) でもせねぁく れぁゆいづげだぁだど。ほんでゆきぁ、一生懸命なてしたたてさんねぁべ。ほの うづ晩方なたど。ほんでもゆきぁ田がら上がらねぁで、田打ぢだけど。 長者の家の息子ぁ、よあがりすっずき、ほれ見で、 「ゆき、まだあがりんねぁなが」 て、声かげだど。ほしたばゆきぁ、 「まだ出来ねぁはげぁぇ、上がらんねぁ」 ていうけど。ほんで長者家の息子あ、 「まだ出来ねぁなて、これがらなんぼするかんじょや」 て聞だば、ゆきぁ、 「まだこれがら、畳三十枚ぐれぁんどご打 (ぶ) てがらんねば上がらねぁなよ」 つけど。息子ぁたまげで、 「ないだどや。ほんげぁぇしたら、夜中んなんべぁな。ほんげぁぇ誰ぁすろつけ どご」 て聞だば、 「ががだ」つけど。ほんでむぞせぁぐなて、 「暗ぐもなてきたし、止めで上がれは。あどぁ、明日の朝ま暗れぁうづん、俺ぁ 雇人連 (わがしえつ) で来てしてくえっさげぁぇ、ががどさ出がしてきたて言 (ゆ) ておげ」 て、親切 (すんへつ) ん言 (ゆ) てくっだけど。んだべちゃやなー。自分みそめだ女子ぁ、継母に いづめらっでんな、見てらんねぁんだおんやー。ほうして、次の日うす暗れぁう づん、息子ぁ、ほの田さ雇人連 (つ) で行て、みな打てくっだけど。 ほれがらなー。長者家の息子ぁ、仲人立でで、ゆきぁどご貰いん行たど。ほし たば、継母ぁ、そでぁどごだばくえんども、ゆきぁどごぁ、今だばくえんねぁて いうおんだはげぁぇ、息子ぁ長者どさゆて、ゆきぁ家のつぁつぁどさ、なんずし ても、ゆきぁどご貰いでぁなで、そでぁどごだばいらねぁて、かげあてもらたど。 ほうしたば、長者がらゆわっだおんだはげぁぇ、ゆきぁあ家の父 (つぁつぁ) 、断 (こどわ) りかねぁ で、ゆきぁどご呉 (く) っだけど。 ほうしてなー。ほれがらなー。ゆきぁ長者家さ行て、皆にめんごがらっで、幸 福ん暮ったど。ほうして暮してるうづんなー。ゆきぁ腹大っきぐなて、そんま生 (な) し そんなたけど。ほんでなー、ゆきぁ実家さ帰 (けあ) えて、丈夫で、ほれごそめんごえお ぼこだけど。 ほんでゆきぁ、自分 (おわ) 夫 (あに) ぁどさ、丈夫だ男おぼこ生 (んま) っだはげぁぇ、喜でころて手 紙書 (け) ぁで、ほれ人 (しと) さ頼だど。ほしたば継母ぁ、ほの手紙とて見だど。ほうして、 面白ぐねぁおんだはげぁぇ、ほの手紙焼えでしまて、自分、別ん、ゆきぁ名前で 手紙書 (け) ぁで、聟ぁどさ届げだどー。 ゆきの聟ぁほの手紙見だば、おぼこ生 (な) したども、片端だおぼこで、眼 (まなぐ) もつぶっ でだおぼこだはげぁぇ、捨てでもえがべ。ほんたおぼこ生して面目ねぁはげぁぇ、 離縁してころはて書 (け) あっだあだけどやー。 聟ぁどでして、ゆきぁどごなの、なんたごどあったて離縁なのさんねど思 (も) て、 ゆきぁどさ手紙書ぁで、持 (たが) がへでやたど。ほの手紙さ、なんたおぼこ生したて、 ほのおぼごぁ、自分 (おら) 達 (だ) おぼごだはげぁぇ、大事 (であじ) んして早く帰 (け) ぁて来 (こ) え。決して離 縁なのさんねて書ぁだぁだけど。 ほしたば、継母ぁ、又ほの手紙取て、焼 (やあえ) えでしまて、自分別ん書ぁだぁだどー。 ほうして、ほんたおぼご生 (も) た者 (おの) 、俺ぁ家 (え) さおがんねぁ。離縁すっさげぁぇ来 (こ) ねぁ たてえは。て書ぁで、ゆきぁどさ見 (め) へだぁだどやー。 ほの手紙みっど、ゆきぁ、情ねぁぐなて、悲しくて、床の中で、赤子抱 (であ) えで、 「めごめご。お前家のつぁつぁ家さ来 く んなどは。めごぁどさ名前 (なめあえ) つけでもらて、 つぁつぁに抱 (であ) えでもらて、大事んしてもらうべど思 (も) たぁだな、家さ行 (え) がんねば、 私達二人ぁ死ぬばんだべは。むぞせぁな、めご」 て、赤子撫でで泣 (ねあ) で涙止まらねけどはー。 ほんで、ゆきぁ、死ぬつもりでいだおんだはげぁぇ、ほの後ぁ、自分家のあにぁ どさ手紙も書がねぁべー、二十日たても、一と月たても家さ帰えらねべしなおん ださげぁぇ、聟 (あに) ぁ、これぁおがしど思 (も) て、ゆきぁどご迎げぁぇん行たど。 ほしたば、継母ぁいねぁで、ゆきぁ赤子どさ乳 (つつ) こ飲まへっだけど。聟 (あに) ぁ、 「ゆき迎げぁん来たぞ」 てゆたば、ゆきぁ泣ぎ始めだけど。ほんで、 「ゆき、なして泣ぐどご。嬉し泣ぎが」 てゆたば、ゆきぁかんぶり振て、 「俺ぁどご離縁するなて、赤子なの男おぼこで、こんげぁぇ丈夫で、こんげぁぇ めんごえな離縁するなて、情ねぁくてだ」 て、おぼご見 (め) へだど。ほんで聟ぁどでして、 「なにっ、離縁するて書ぁっだて、ほれぁおがし。お前片端だおぼご生して面目 ね、こんたおぼご生す女 (おなご) だはげぁぇ、離縁してころて書ぁでよごしたべ。んでも 俺ぁ、なんたおぼごだて俺達おぼごだはげぁぇ、大事んして、早ぐ帰えて来え。 て書ぁだぁだ。んでぁ、俺ぁ手紙見へろ」 て言たど。ほしたば、ゆきぁびっくりして、 「なえの話 (はなす) だやは。んでぁまづこの手紙見でころ」 て、ほの手紙しとごろさ入っで、 「ゆきっ。こんた所 (どご) に一寸 (しっとえあ) もいらんね。まず早く家さ行ごは」 て、家さ連 (つ) で行たど。 ほうしたば、長者家でぁ、ほの赤子おぼご見で、 「なえだてめんごえ、丈夫な赤子だごど。ほれさ男おぼごだおん。えがった」 て喜で、祝事 (ゆわあごど) してくっだけど。 ほれがら聟 (あに) ぁ、自分どさ来た手紙ど、ゆきぁどさ行 (え) た手紙持て、代官所さ、 「こういう偽 (ねへ) 手紙書ぁで、母親ど赤子自殺 (ずさづ) さへるよだ目あわへる者 (おの) ぁいだは げぁぇ、どうが詮議 (へんぎ) してもらいでぁ」 て訴え出だど。ほうしたば、代官が、 「これぁ二通とも同じ字で、女の字だな。よし」 て、とりあげでくっで、いろいろ調べだば、とうどう、ほの手紙書ぁだな、継 母で、ゆきぁ今まで、どれ程いづめらっだがわがらねぁていうごどまで分て、継 母しめぁらっては、百ただぎんさっだほがん、牢さぶづごまっでしまたけどは。 とんぴんからんこぁねぁっけどは。 |
(話者 高橋九米次郎) |
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