12 ごげかがむがしむがしあったけどー。ある所 (ど) さなー、母 (かが) に早く死なっだ女 (おなご) の子供 (わらす) こぁいでぁっ たど。ほごの家さ継母 (ごげかが) 来たけど。ほの継母なー、女の子供こ連 (つ) で来たけど。ほの 女の子供こぁなー、前 (めあえ) の母の子供こより年下であったど。んだはげぁぇ、前の母 の子供こぁどご、姉て言 (ゆ) ってだけど。ほの継母、初めの一、二年ばりぁ、前 (めあえ) の母の子供こどさもえがったども、三年 もたたね頃がら、自分子供こばりめんごがて、前の母あ子供こあどさまだ、あそ ご拭げ、こご拭げて、拭掃除ぁさへんべしだども、自分子供こどさは何にもさへ ねぁがったど。前の母の子供こどは、朝早ぐから起ごして、飯たがへんべし、夜 んままだ夜んまで、自分据 (ね) まてで、水屋 (みじや) しめぁぇはさへんべし、起ぎっどから寝 るまで、暇なし使うなし使うなであったど。まま子いじめずんだなー。 ほうして、姉娘ぁ十二、三にもなっど、家 (え) ん中のごどさへだ他 (ほか) ん、春だばわら び採てこえ、竹の子採てこえていうべし、田だ畑だて休む暇ねぁがったど。ほう して、姉娘ぁ外さ出はたていうど、自分 (おわ) 達 (だ) ばり小豆汁して食たり、牡丹餅 (ぼたもづ) つで食 たり、んめぁぇおのあ自分達ばりして食てんなだけど。 んだはげぁぇ、姉娘ぁ陽にやげで黒ぐはなんべし、手足さアカギリあ切れんべ し、めんごげなのしてらんねがったど。ほうして、着物だて、着替 (きげあえ) なのねぁおん だはげぁぇ、あつこつ切れっどぁ継ぎ、切れっどぁ継ぎなおんださげぁぇ、きれ だ物なの着てっごどぁねぁがったど。 村の人 (し) 達 (たづ) ぁほれ見で、継母じゅあ、あーいうおんだべちゃやなー。まずまず姉 娘ぁどごいどしごどて、みでんども、なんずもさんねぁじゅんだ。ほんとんむぞ せぁがったど。 ほうしてなー、ある時 (づぎ) 、姉娘ぁ継母に、わらび採てこえて言 (ゆ) わっだけど。ほう したば、妹も「姉、俺ぁどごも連 (つ) で行 (え) ご」ていうけど。んでも邪魔なるばんだど もて、「楽んねぁはげぁぇ、お前、家にいろは」て言 (ゆ) たども、連 (つ) で行 (え) ごどて聞がねぁ けど。ほうして、継母もほんげぁぇいうもの連 (つ) でえげて言 (ゆ) うけど。ほんで仕方ねぁ 山さ連で行たど。 ほの日ぁ沼の傍さ行てぁったど。ほの沼ぁ、あんまり大っき沼んねぁども、深 (ふけあえ) くて深くて、底ぁ見ねぁくれぁで、青々てる沼でぁったど。 二人ぁ、ほの沼の側で、一生懸命なて採てだど。ほうしているうづん、じゃぼ んていう音あして、あっあって叫 (さ) がぶ声ぁすっけど。姉娘ぁ、はっと思 (も) てほごさ 走してえてみだば、妹ぁぶくぶぐと沈 (すず) んでえぐどごだけど。ほんで姉娘ぁ、自分 もざんぶり、ほごさ飛込 (ご) で、助けるかんじょしたど。んだて、十四や十五のわら すこだべ。二人ぁただ、ぶぐぶぐど沈でしまたけどは。 ほれがら暫ぐしてがら、白え着物きた神々し女人 (おなごしと) ぁ、両手さ何が抱 (であえ) で、沼が ら上がて来たけど。えぐ見たら、抱がっでだな姉娘の方だけど。ほの女人ぁ沼の 主であったど。 ほうして、ほの女の神さまぁ、姉娘さ、ええ着物きへでくっで、体中撫ででくっ だけど。ほしたら、姉娘ぁ生れ代たよん、きれんなて、生ぎ返 (げあえ) たけどや。 ほして神さま、 「お前は、本当なら憎えはずの妹を助けるため、自分の命も惜しまないで、よぐ 沼さ飛び込 (ご) だ。その心の美すさど、やさすさを感じだがら、お前を救ってやった が、妹の方は神さま達が、そのまま天さ連 (つ) れで行ぐそうだ。しかしお前だげを家 さ帰 (けあ) えせば、継母に悪心を起さへ、罪つぐらへるごどんなる。んだがら、お前は この山を越した、ずうっと向うの村さ行げ。ほうして、最初の家さ泊めでもらえ。 ほごの家さ何時までもいで、ほごの家の若者 (わげあえおの) の面倒みろ。ほの若者は神々のめ がねさかなた優し若者だ。今 (えま) 貧乏だが、お前を嫁にしてくっで、ほごの家さ置え でくれる。だがら、二人で一生懸命働げば、必ずええ運が来て、暮しもえぐなる。 んだはげぁぇ、この山越えで、一番始めにある家さ行げ」 ていうけど。 姉娘ぁ、ほの女神さまの親切 (すんへづ) だ優し言葉では、母親 (がが) そばんいるみでぁんた気ぁ して、ががー。ていうど、ほの女神さまさ抱ぎづえで、泣 (ねあえ) でしまたけどは。女神 さまも姉娘ぁどごぎっつぐ抱えで、 「よしよし。これがらえぐなっさげぁぇ、泣ぐな泣ぐな」 て、頭撫ででくっだけど。 ほうして、姉娘ぁ山越え野越えして、一番始めの家さ泊めでもらて、ほごの家 の嫁こんなて幸福ん暮したけど。 ほれがらなー、継母ぁ、自分娘あ二日たても三日たても来ねぁべ。ほうすっど 「おもよー、おもよー。」て、自分娘の名呼ばて、泣ぎながらさがして歩ぐけど。 ほうして、仕舞 (しめあえ) にぁこじき(ほえど)んなて、どさが行 (え) て見ねぁぐなてしまたけ どは。とんぴんからんこぁねぁっけどは。 |
(話者 高橋良雄) |
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