9 ろくでぁぇの地蔵さんむがしあったけど。あるどさなー。うんと貧乏だ爺いさんと婆さんいだけど。今 (えんめん) に正月も来 (く) んども、餅つぎでぁぇども餅米もねぁぇ、魚買いでぁぇども金も ねぁぇおんだはげぁぇ、爺いさんが、 「婆ぁさん、婆ぁさん。編笠でも作 (つ) くて売てきて正月すっがや」 て、婆ぁさんど相談して、編笠五 (ご) ん枚 (めあえ) 作くて、ほれ背負て町さ出がげだけど。 ほの日ぁ雪降りで、ほれもまずまず降るおんで、ひでー天気だけど。んだおん だんだはげぁぇ爺いさんまだ難儀して、ようやぐろぐでぁぇの坂まで行 (え) たど。ほ の坂さ地蔵さん六つ立てだぁだど。 ほうして、この雪降りに地蔵さま笠もかぶらねぁで、頭がら雪かぷて、だらく されん濡っでだぁだけど。ほれ見で爺いさんが、 「あらあら。地蔵さま、笠もかぶらねぁで、だらくされだは。まずまずむぞせぁぇ ごど。持てきた笠売るどごんねぁ、地蔵さまさかぶへねぁんねぁ」 ていうなで、持てきた笠みな地蔵さまさかぶへだど。んだて五つはんて持てこ ねぁ笠だおん。あど一 (しとっ) つ足んねぁんだおん。ほんで仕方ねぁ、自分頬 (ほっ) 被りしった 手拭 (てぬげ) とて、ほれ被へで家さ来たけど。 ほしたば、婆あさんが、 「なえだて爺いさん、めっぽう早えごと。町まで行て来たあだがや」 て聞ぐけど。ほんで爺いさんが、 「ろぐでぁぇの坂まで行たば、地蔵さま笠もかぶらねぁで、雨雪でだらだらどみ な濡っでだおんだおん。むぞせぁぇはげぁぇ、持て行た笠、みな地蔵さまさかぶ へできたは」 て言 (ゆ) たば、婆あさんも喜で、 「ほう。んでぁえがった、えがった。んでぁ町まで行がねぁで、地蔵さまさ被へ できてくっだなが、んでぁえがった、えがった」 て、婆あさんも喜でいだけど。 ほうして、二人 (したり) ぁ、んでぁ別の工面しねぁんねぁ、ていうごどんなて、ほれぁ まず明日工面すんべて、二人ぁ寝だけどは。 ほうして、夜中んなたら、表の方でがやがやて、賑やぁがだ音してきたけど。 ほんで、爺いさんが、 「婆あさん、婆あさん、にぎやぁがだ音ぁすんども、なにの音だおんだべ」 て、二人ぁ聞き耳 (さず) 立 (ん) で聞 (き) っだど。ほしたば、 「ろぐでぁぇの地蔵さ笠買て被へでくった爺ぁ家ぁどごだべな」 ていうなだけど。 ほんで、爺いさんが、 「まずまず、だまってえぐきいででみろ」 て、まだ、二人ぁさずんで聞っだば、爺いさんの家の前さ来て、 「ろぐでぁぇの地蔵さ笠買て被へでくっだ爺ぁ家ぁどごだべな」 ていうおんださげぁぇ、 「んでぁ婆あさん、俺ぁ家だべや」て言 (ゆ) たど。ほんで婆あさんも、 「んだな爺さん。んでぁ、俺ぁ家だ俺ぁ家だて、叫がでみろちゃ」 て、婆あさんがいうおんださげぁぇ、爺いさんが戸開げで、 「こごです。こごです」て叫がだど。ほうしたば、頬被りしった地蔵さま先 (へん) 達 (だぢ) で、 「あー、こごだ、こごだ」て、車さえっぺぁ金積 (つ) で来たあだけど。ほうして、 「昨日 (きんな) ぁ、濡れねぁで夜過 (す) ごすごどでげで、おおぎん有難どさんでしたは。ほの お礼ん、この車がらみ置えでえぐ」 て、車がらみ、すこでぁぇま金くっで行 (え) たけど。 ほんで、爺いさんど婆あさんまだ、笠売たどごんねぁ、大した長者んなて、楽々 ど暮らしたけど。とんぴんからんこぁねぁっけどは。 |
(話者 高橋キク) |
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