29 屁っぺり爺

 むがしあったけど。
 むがしあるどさなぁ、爺さまど婆さまいてあったど。
 ある時(づぎ)なぁ、爺さまぁ庭掃ぎしたど。ほしたば、庭さ豆ぁ一(しと)粒落ぢっだな見つけだけど。爺さまぁ、
「あらっ、豆ぁ一つ落ぢっだじゅは。婆さま、婆さま、この豆なんずしたらえがべ」
 て、婆さまどさ相談したど。ほしたば婆さまぁ、
「んだな爺さま、一粒ばりだおん、んでぁ半分は種子んして、半分ば黄粉でも作(こしぇ)っが」
 て、半分に分げで、半分種子んとて置えで、半分ば婆さま黄粉ん作(こしぇ)だど。
 ほうして、ほの黄粉、どごさ置えだらえべて、二人(したり)ぁ相談したど。下さ置げば猫ん食れんべし、上さ置げば、ねずみに食れんべし、ていうなで、仕方ねぁはげぁぇ、爺さまど婆さま寝る間(えあだ)さ置えで寝んべて相談して、二人ぁ寝る間さ置えで寝だど。
 ほうして、夜中んなっど、爺さまぁ、すこでま大っき屁、ぶうっどたっだずおん。ほしたば、爺さまど婆さまの間さ置えっだ黄粉ぁ、みなふっとばさっでしまたけどは。
 ほしたば下でぁ、猫ぁ、
「爺ぁ屁の実ぁ、んーめんめ」
 上でぁ、ねずみぁ、
「爺ぁ屁の実ぁ、んーめんめ」
 て、猫とねずみぁ、みななめでしまたけどは。
(集成三八八「爺婆と黄粉」)

〈話者 高橋久雄〉
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