39 馬鹿聟

 正月に嫁の家さ集まったど。娘が連(せ)てきて集まって、その時の粕漬うまくて、
馬鹿聟、うまいもんだげんど、いまと食せて呉ろてもいわんねんだし、少しばり
御馳走なって止めたわけだ。
 ほうして夜、夜這い入って漬物、瓶さ入(い)っだのさ、瓶のやつぺろり食って、ま
だ足んねくて、瓶さ首つっこんで舐めだ。
 舐めたええげんども、瓶とんねぐなった。んだどはぁ、ほれから、仕方ない、
なぜしても取らんね。ほれから便所こっちだと思って、隠っでいらんなねと思っ
て、便所の下さ行って隠っでいた。
 ほうしていたところが、別な聟がババたれ行って、ババたれだげんど、尻ぬぐ
い無いがったど。ほれからほこらの石拾って、石で尻のごった。そしてそれから
その石投げたところが、かぶった瓶さ当ったど。バェンと音して、そんで瓶割っ
で出はったわけだ。
 そうして二人の聟どのは、
「こういうことは黙ってで、語んねことすんべはぁ」
「ほんじゃ、石で尻のごったのも、瓶かぶってたのも黙っていんべはぁ」
 て、いたわけだど。
 そして次の朝げ、聟どの三人も集まったもんだから、おんつぁまだ、おばさま
だ皆招んで、祝い始めたわけだ。ほうして座敷さいたところが、石で尻のごった
聟どのは、〈鶴亀〉の謡い始めたど。
 そいつが〈鶴亀〉だったから、亀のこと、〈瓶〉のこと語んねことしてあるに、
謡いで教えるつもりだと思って、
「石で尻のごった」
 て、別の聟言ったど。
(砂子関・工藤馨)
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