36 甘酒

 むかし、甘酒作って子どもが、
「番してろ、にさ(お前)」
 その子ども、〈プツ〉と名付いっだど。ほして、
「甘酒かましてろよ、プツ」
 て。ほして甘酒一生けんめいにかましていたら、プツプツとわいできたはげ、
「何だ」
〈プツプツ〉「何だず」
〈プツプツ〉「何だず」
 て言うたけぁ、返事すねわけだ。甘酒だからな。めんどうくさいはげ、火箸で
はぁ、ジュグリと刺したんだど。
 ところが、甘酒がざぁーっともってしまった。そしておっか帰ってきた。
「甘酒、ええあんばいだが、プツ」
「プツプツていうから、〈何だ、何だ〉て言うても、何ても言(や)ねはげはぁ、ごしゃ
えではぁ、火箸でさして、みな割ったはぁ」
「馬鹿、ほに。勘定のない、プツざぁ、煮立つはげ、プツプツていうたんだ」
「なして、おればプツて名付けだんだ」
 て言うたど。
(砂子関・工藤かなえ)
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