27 食わず女房

 その男は、毎日ひにち、
「飯(まま)食ねおかた欲しい、飯食ねおかた欲しい」
て、町中にお触れ出したんだど。ほしてなかなかいねがったべ、ほれ。
 何日(いつか)も経って、やっと見つかったんだど。
「わたし、飯食べません。んだからおかたにして呉らっしゃい」
 こういうわけだ。ほうしているうちに、嫁さんは、いつ来て見ても、飯、朝炊
いで亭主を送り出す。食った跡がない。おやじは、
「何だて、いっかも飯食ねで、なになもんだべ」
 て、二階さ上がって隠っで見っだったど。ほしたら大きな鍋さ飯いっぱい炊い
で、ヤキミシ握って、頭の中じりさ、ストンストンと入っでやるんだど。そいつ
が山姥だったべか、山さ逃げて行ったど。
(砂子関・工藤かなえ)
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