18 猿聟畠の草とり大変だから、「畠の草取りしてけっど、三人いた娘、どれかええな、やってもええ」 て、もらしたけど。ほしてまた三人娘の末っ子が猿の嫁になることになったど。 その娘がなかなか利巧な娘で、猿どこなて、人間だらば行かれるわけない。そ れを、「おれ、行ぐ」て、嫁(い)って、山さ行った。 こんど、 「里帰りに、何もって行ったらええべ」 て、猿が言うわけだ。 「何も、ほれ、土産なていうものないげんど、餅でも持って行げばええっだな」 て、ほのかがいうた。 「何さつめて行ったらええべ。お鉢さでもか」 「お鉢なのさつめっど、おらえのおどっつぁんだ、食ねもね」 「んだら、何や、鍋さでも入っでがぁ」 「鍋も鍋くさいて食ねもの」 「何、んだら、臼がらみか」 「んだな、臼がらみだらええでねぇべか」 そういうて臼がらみ背負せた。途中に大きな桜の木、春先だから、桜満開に咲 いっだんだけど。ところぁ、 「ああ、桜咲いっだな、この桜一枝折って行ったらば、なんぼか喜ぶべちゃ」 ていうたて。 「んだら折って行んか」 「んだなぁ、折ってけろちゃ」 猿なもんだから、木登りなど何でもない。ところが、臼がらみ背負ってだ。 「臼、こさ降ろしてが」 「こさ降ろすど、土くさいて食ねぐなるも」 「んでは背負ってが」 「ん」 て、ほうして、その桜の木がガケの高いところの下のえらいガンガンしたとこ ろの桜の木であったど。それからその桜の木さ臼背負ったまんま登ったど。 「この辺か」 「いや、ほだどこでなく、もっと上よ」 「この辺か」 「いや、ほだどこでなく、もっと上よ」 「この辺か」 「まだ上よ、ありゃ、あそこにええのある。ちょっと上の方」 「この辺か」 「いや、もっとだ」 て、登って臼背負って登ったもんだから、「この辺か」ているうち、桜の木折れ だってよ、重たくてはぁ、ほうして臼と共に真逆さまに落っでしまった。猿が水 におぼれて死んでしまったていう話だ。 |
(砂子関・工藤馨) |
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