10 サルカニ合戦

 むかしあったけど。
 猿とカニがあったけど。ほしてほに、猿は柿の種子もつて、カニの方はおにぎ
り持って、交換しろて言(や)っで、交換したどこだけずな。
 ほして、カニが柿の種子植えでよ、
   早く芽を出せ 早く芽を出せ
 て、水をかけて、育(おが)したど。ほうして大きく柿の木おがったど。柿実(な)ったれば、
柿を猿が見つけで、そして来て、
「ほの柿もいでける。んだはげ、あたしにも食せろ」
 て、猿言うどこなよ。ほして柿の木さのぼって自分ばりうまいどこ食って、カ
ニには青いどこぶっつけではぁ、カニをいためだど。カニが泣きながら帰って行っ
てはぁ、蜂など栗など、臼など行き会って、
「何して泣いっだ、カニさん」
 て聞いたれば、ほれ、わけ語んなだけ。
「猿にこうさっではぁ」
 てよ。こんど、みんなで猿の家さ、「仇とってける」て行って、猿、山から帰っ
て来んな待ちででそしてそこさ猿帰ってきた。栗は火所(ほど)の中さ入って隠っでだし、
臼は屋根の上さのぼって隠っでいだし、蜂は味噌瓶の中さ入って隠っでだなてよ。
「さむい、さむい、おおさむい」
 て、猿は来て、火焚いで当たったれば、栗は跳ねできて、あつくさせだなてな。
ほして、あつくしたとき味噌つけっどええて言うはげ、味噌ガメの蓋とったれば、
蜂出てきて、蜂に刺っだ。
「こういうときは、家になのいらんね」
て、逃げだれば、上から臼落っできて、つぶさって仇とらっじゃはぁなて。ほん
でどーびんだ。んだからいじわるさんねもんだど。
(月山沢・遠藤あさえ)
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