11 虎の皮

 むかしとんとんあったずま。
 ある部落に、稼がねで何とか銭入る方法ないべかなぁて考えっだ人いだったど。むかしの百姓はきついもんだから、何とか、こりゃ。江戸あたりさ行ってみっど、みな曲って稼いでいっかていうど、ほでもない。相当楽なような格好して暮している人もいるし、なぜか楽して暮す方法ないべかなと思って、つねがね思っていだったて。
 ところが、友だちが来て、
「今まで稼いんだ人が急に病気したもんだから、その人の代りに、代役、何とか探しにきた」
「楽だか」
 て聞いたら、
「いや、楽この上なしだ。寝たり起きたり、あくびしたりぐらいしていっど、ええんだ」
「ほんでは、なんぼ呉るんだ」
「百文だ」
「いや、百文では大したもんだ」
 わらじ二足で三文しかならね時代だから、はいつが百文だ。こいつは大したもんだ。
「んだらば行ぐげんど、()んた仕事だ」
「いや、寝たり起きたりしてっどええのだ」
「ほだえ、ええ仕事あっか」
「いや、あるんだ。()じゃてみろ」
 というわけで、その人が頼まっで行ったれば、江戸の見世物小屋のライオンの皮着て、ライオンになんなだけど。ほして立ったり寝ころんだりして、お客さまずうっと見て通るうち、寝たり起きたり、あくびしたりぐらいしてっど、ええわけだど。ほして一日(ひして)、二日過ぎだど。
 楽で百文ずつもらってええもんだと思っていたれば、〈東西、東西〉ていうわけで、始まったんだど。
「このライオンの檻さ、虎入れてやる」
 ほうして、ほれ、虎の檻、みなしてかついできて、ライオンの檻の傍さ、ふっつけたど。
「いや、なんだ、おれば虎の食いものにするため、楽するなの、何だのて言うた。友だちだなていうたて、アテにさんねもんだ。おれば虎の餌食にするため、わざわざ田舎から引張ってきたんだ。いや、おれも第一巻の終りだ」
 と思って、ふるえていだんだど。いよいよもって檻の蓋あいだんだど。〈うわぁん〉というけぁ、虎入ってきた。ほうして小っちゃこくなって、すぐだまっていたれば、
「おい、おい、心配すんな、おれだ」
 ていうたって。ほいつぁほの募集にきた人だったって。ほして二人ぁ、じゃれで、その場終って百文ずつもらったて。どんぴんからりん、すっからりん。
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