7 先生の手紙ほの人ぁ、なかなか大らかな人だったもんだから、やっぱり女にももてたらしいんだな。ほして上山さお妾さんかこっていたもんだど。ほしたれば、ほのお妾さんから手紙来たわけだど。 「あなた、五十両呉でけるて、この前言うたんだげんど、その五十両、いつ持ってきてけんのだ。首長くして待ってだ」 ていう。切々たる恋文きたど。はいつ、先生いたどこさ来っどええがったげんども、奥さんと息子いたどこさ来たずも。 ところが、はいつ、女文字だていうわけで、奥さんが開いてみたんだど。ほうしたれば、やれ五十両持ってきてけるなていう、切々たる恋文なもんだから、ごしゃえで、ぶりぶりしていたずも、ほれ。 「なんだ、家の中つめて、ぷりぷりていうて、五十両呉るの、百両呉るのって、もっての他だ」 て、息子と語ったど。ほさ「うっふん」なて、表から帰って来たずも、ほれ。ほしたけぁ、 「ううん、この野郎だ、見たな」 なて、来るより早く。 「旦那のすること気に合わねな、皆出て行け。おれはこの家の主だ。おれのすること気に合わねな出て行け」 なて。ほしたら奥さんと長男は出はって行かんねがったずも、ほれ。して、黙ってしまったって。 先に、豆泥棒だの、芋泥棒だの、稲泥棒だのて、やっぱり居っかったって。はいつさ、豆番、芋番て、番つかんなね。 その先生は若衆頭だったずも、ほれ。ほしたけぁ、小太さんていう人きて、 「先生、今夜、豆刈りのクジだい」 こうなったど。若衆だ集まって、豆刈ってきて、青バタ豆ば、ゆで豆にして食うなだったど。 て、〈クジ引いてけらっしゃい、先生〉て、持ってきたど。小太は持ってきたわけだ。 「この野郎、にさのクジは駄目だ、なんぼ引いても、おれしか当らねから、八百長だ。おれ、クジ拵 と、こうなったわけだど。ほしたけぁ、引いたけぁ、ほの小太はんが当ったずも、ほれ。ほしたれば、ヤサモサと一背負って来たわけだ。 「いやいや、小太、お前の豆刈りは上手だ。この豆のうまいこと、こりこり実入って、すばらしい豆なもんだ。豆刈りは小太に限る」 なていうたわけだ。 「いや、御馳走、御馳走」 なて、豆食ったわけだど。 したれば次の日、親父ぇ呼び出さっだずも、ほの先生は……。 「こりゃこりゃ、何だ、お前。若衆頭だ、芋番だ、豆番の親方だのって、どこさ昨夜 ていうたって。 「ん、あの野郎、ほに、小太野郎だ、おえね野郎(わるい野郎)だ、ほに。おら家の豆刈って来たずぁ」 ていうわけで、 「小太、小太、にさ、おら家の豆刈ってきたった。んねが」 「先生、泥棒だも、どこここていらんねっだな」 「ん、それもそうだ。豆のクジいらねはぁ、おればり刈るはぁ」 ていうたって。 こいつは楢下の逸話だ。 |
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