24 化かされたよう平

 やっぱり昔のことです。町に買物に行って来た馬喰のよう平さんが、夕方暗くなって帰って来ました。暗い山道にさしかかると、女房が迎えに来ていました。そして女房は今日は気がきくなあと思っていました。
「よっぽどくたびっちゃべえ、風呂わかして待っていだから」
 と言って、急いで帰りました。よう平さんは喜んで、
「熱い、熱い、いい風呂だ」
 といっている内に、飲んで来た酒もさめて、よく見たら、風呂はダラ桶に入っていました。熱い熱いと言ったのは、その傍に蜂がよう平さんをさしていたからでした。
 もちろん買って来た魚はありませんでした。その女房はその山に住む、人を化かす悪い狐だったそうです。

 世間話から生れた昔話の一つと思われる。昔話というより、世間話であることから、よう平というのは実在の人物を模したものであろうが、「熱い」のは蜂にさされていたという話は面白い。
(金沢 新関光造)
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