22 神様と大根

 昔な、大国様という神様がおりました。ある日意地悪な神様がなんとかして大国様を殺す方法はないだろうか、と言い出すと、
「大国は餅が好きだから、餅で殺してやろう」
 と相談が決って、餅を搗き始めました。そして神様たちは大国様を呼びに行きました。
「大国様、大国様、私の家で餅を搗きましたから、食べに来て下さい」
「はいはい、喜んで参ります」
 と言って、殺されるとも知らずに、大国様は後について行きました。神様達は、
「大国様、これもうまいよ」「これも上らっしゃい」「それもうまいよ」
 とすすめたので、
「それでは遠慮なく頂きます」
 と、もぐもぐ食べてから、大国様は、
「腹がハジケル程御馳走になった」
 と言って、サヨナラをして家に帰ることになりました。途中で大国様は急に腹が痛くなりました。
「これは困った、そうだ餅を食べたとき、消化するものを食べなかったからだな」
 そして「あーあー、苦しい」と困っていると、道の傍で一人の女が大根を洗っておりました。それを見た大国様は、
「娘さん、その大根を譲ってくださらぬか」
 というと、
「駄目です。この大根は勘定してあるのだから」
 とことわられました。
「それなら半分でもよいが」
 と頼むと、「そんなら、この股大根の半分をあげます」と言われたので、「よいよい、半分でもよい」と受取るが早いか、ガリガリ生大根をかじって食べたところ、あんなに痛いお腹もおさまりました。大国様は、
「ああ、助かった。この大根がなかったら、命をなくすところだった」
 と喜んだそうです。それで今でも「耳あけ」のときは大国様の喜ぶ股大根を供えて、機嫌をとるのだそうです。

 12月9日は大黒の耳あけで、それにちなむ昔話であるが、地方によっては弘法様(米沢市上郷)であったりする。股大根は大黒のオカタという。
(金沢 新関光造)
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