19 かわうそと狐(一)

 かわうそは雑魚とり好きで、上手なもんだから狐もまねしてとりたくて、
「かわうそ殿、かわうそ殿、なじょしてその雑魚そがえにいっぱいとれる」
 と聞いたど。そしたれば、
「寒じる晩げ、堀さ行って、氷(すが)掘ってその中さ尻尾をちょろっと入(い)っでおくと、重たくて引上げらんね程雑魚食っつく」
 とだと。そのまねやったみたと。ところが雑魚など一匹も喰付かねで、ガンガンと凍みて、そのうち夜明けて来たというわけよ。そうすっど、人に見付けらっで、
「あそこに狐いた」
 なんて、やんやんと言われっじと、大変だと思って、なんぼ雑魚ついたと思って、尻尾を引張ってみたげんど、仲々抜けて来ない。ちいとばりの小っちゃい雑魚ぁ落ちてもええからというわけで、
「少々な小雑魚落ちでもええ、えんさらさえんさらさ」
 と掛声かけて狐は引張っていたってよ。んだげんどもガンガンだから、尻尾抜けてしまったど、スポーンと。そうすっど痛くて痛くて、血はだらだら出たべし、山さ、コンコンコンコンと泣きなき登って行ったと。そしたら、
「狐殿、狐殿、そがえに、なにして泣きやる」
 と猿が来て言うたと。そしたらば、
「こういう訳で、ゆんべ雑魚とりに、かわうそから聞いてその通りにしたれば、雑魚など一匹もとれないで、尻尾抜けたごんだ」
「いやいや、それは可哀そうだ。オレが薬作って付けて呉(け)っから…」
 と、南蛮と味噌を出させて、擂鉢ですって、べったり貼ってくれたど。それこそビリビリと痛かったと。とうびんと。
(宮原 山崎みやの)
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