(5)旦那に行きたくない金

 あるとき、魚(いさば)屋さ左平が稼ぎに行ったと。そして給金もらうときになったれば、その魚(いさば)屋の旦那が、金出して、
「銭(ぜに)、銭、左平のどこさ行きたいか、行きたくないか。行きたくない!?ほんじゃ、この次だごで」
 と言って、馬鹿にされて銭もらわんねがったと。
「ほんじゃ、仕様ないごでな」
 ともどって来たずま。
 それから時過ぎてから、その魚(いさば)屋さ左平が行って、
「今日は御祝儀の特別の注文の魚だほで、オレの言うように切って呉(け)ろ」
 ということで、とんでもない形のものばり切らせたもんだと。そして、
「なんぼになんべ」
 と左平から言われて、魚(いさば)屋の旦那、勘定して、
「この勘定はこうだ」
 と言うと、左平は財布を出して、
「銭(ぜに)、銭、旦那どこさ行きたいか、行きたくないか、なに!!行きたくない!?ほんじゃこの次だごではぁ」
 左平に敵(かたき)とらっじゃずま。
(大橋 川井弥右衛門)
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