6 まま子いじめむかし、馬子してる男が男の子一人もって、妻(かか)に逝くならっだんだと。そして後妻(あとかか)迎えたんだと。その後妻にまた女の子が二人いたんだと。冬寒くなる節になって、 「寒くなるから子どもらに綿買って来て、綿入れ拵(こしゃ)えて着せろ」 と親父が綿買う金あずけたんだと。そうすっど後妻は綿買って来て、衣裳拵えて呉(け)たんだと。そして自分の子にばっかり綿を入ってけて、先妻の子に藁屑入れて着せったんだと。んだけんど、男の子だから知らねで、おとなしい子どもだったから、黙っていたんだと。 ある日、手使いに、馬子の綱引っ張りさせらったと。そして遠いところに行くとき、着物温かくないもんだから、手凍(こご)えて綱はずすこんだと。そうすっど、 「なんだ、とぼけてばっかりいる」 というて、背中バサッと叩いたれば、藁屑だったと。そうすっど、親父怒って(ごしゃえて)家さ来て、おかたの髪の毛、ぎりぎり引張って、 「お前みたいな者、家さ置かんねから出て行け」 と外さ出したんだと。そしたら、先妻の子は親父どこ押えて、 「決しておっかさんを何処さも出してやんねでおくやい」 と止めたと。 「なして、お前。お前どこに藁屑ばり入れて着せるようなおっかさんを、それほどお前は引き止めておきたいのか」 と言うたら、 「この親なればこそ、オレ一人、藁屑着てすむ、この上、このおっかさんに出て行かっで、別なおっかさんがこの家に入って来たことなれば、オレ一人ですむもの、妹二人まで藁屑入った衣裳着んなねでないか」 とだと。親父も涙こぼして感心したと。それから継母(ままかか)も改心して立派な人になったと。 この話は昔話というよりも事実をもとにした話であろうと思われ、昔話のもつ、モチーフは似ているが、ストーリーの面白さがなく、教訓的な色彩が強い。 |
(大橋 三瓶ちの) |
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