43 瓜姫子と天邪鬼むかしあったけど。あるところに、じじとばばがええ仲に暮してて、そして間に子どもなかったど。ばばは洗濯に行き、じじは山さ柴刈りに行ったんだな。そして洗濯しったときに、赤い手箱と黒い手箱が流れてきて、 黒い手箱そっちゃ行げ 赤い手箱こっちゃ来い て、ばばが言うたら、赤い手箱は手前さ流っで来たど。そして蓋とってみたら、大きな瓜入ってで、「大そう結構なもの拾った」と思って、こんな大きな瓜拾って、持(たが)って、家のじさまに見せんべと思って、持って帰って来たんだな。 おじいさんが山から来たとき、 「今日は拍子ぁええくて、川に洗濯に行ったら、赤い手箱流っできたから、拾って蓋をとったら、こんな大きな瓜が入っていたど。そして蓋とったら、瓜が入っていたから、珍らしいもんだと思って、おじいさんに見せんべと思って持って来た」 て、家さ持って来たど。そしたら、 「そんがえな、めったにないごんだから、棚さ上げてしまって置け」 て、二人ぁ棚さ上げて寝たどこだけ、どれ。そしたら夜中頃、おぼこの泣き声する。子どもの泣き声する。うんと、じじとばば、子ども欲しくっていたもんだから、起きてみたれば瓜が二つに割れて、中から女の子どもぁ生まれっだ。それを瓜姫子と名付けたど。そして毎日、蝶よ花よと育てているうちに、大そうそのおぼこがトコロ好きでな、山にトコロざぁあるもんだ。ツルさ出て、玉がくっついてる ―― トコロ好きだから、おいしく食べるもんだもの、毎日絶やさず、おじいさんとおばぁさんが山さ行って掘ってきて、食べさせて、そうしているうちに、成長して、大きくなっじと、機織りさせた。そして毎日機織りして、 「また今日もトコロ掘りに行んから、天邪鬼来るからな、天邪鬼がきて、お前んどこ食べっかもしんねから、恐ろしい化物だから決して、錠かけて行んから、開けんなよ」 て、よっく教えらっじゃんだな。山さ行くときによ、じじちゃとばばちゃに。教えらっで気許さねで、来たたて戸など開けまいと思っていたげんども、やっぱり留守めがけて来たんだな。それ……。そして機織りしったところに、 「瓜姫子、出はって遊べ」 て、友だちになってな、 「んだげんども、戸開けんなって、じじちゃとばばちゃに教えらっじゃから、開けらんね」 て言うたら、 「少し、指の入るくらいでもええから開けて呉ろ」 て、正直なもんだから、子どもなもんだから、少し開けだら、力持ってでガラガラと戸開けて入って、むしゃむしゃと、その機織りしった娘噛みつぶして、瓜姫子になって、機織りの台さ上がって、機織り、化けてしったど。そしてやっぱり年寄衆はもどって来たわけだ。山から……。そしてもどって来て「今来た」て言うたら、「お帰り」なて立派に言うんだし、やっぱり瓜姫子だと思って、じじとばばいたわけだ。そして茹でて食べらせたれば毛もむしんねで、ワレワレと食うわけだ。 「毛は毛の薬、皮は皮の薬」 なてはぁ、食うわけだ。そんなもんだから、 「奇態な、こりゃ、とんでもないことになったもんだ。今まではこんなことしたことはないに…」 て、不思議に思ったわけだ。んだげんども、まさかと思って、じじとばば、悟らんねがったんだな。そして毎日同じことに機も織るんだし、してるうちに、長者原というとこの立派な家からもらいに来たていうんだな。もらいに来て、ただ一人娘、そんがえに立派な家さ、育てた娘もらいに来たんだし、じじとばば呉っでやることにして、仲人に、そっから立派な篭で、篭かき尋ねてきて、御祝儀になったごんだごでな。篭さのせてギシギシと、立派にいとまごいして、一生懸命になって、じじとばば呉ってやっどき、その途中に鳥飛んできて、 瓜姫子の のりかごさ 天邪鬼ぁのりーた のりーた て言うわけだど。そうすっじと、やさえないもんだから、天邪鬼は「畜生!」て追うげんど、また追かけてきては、そういう風にさやずる。そうすっじど、やっぱり天邪鬼なもんだから、 「この畜生は化けて、瓜姫子を殺して、自分が化けていたな」 て、落して、篭から落して叩いて殺してしまったわけだ。そしてカヤ野さ埋めたから、カヤの根っこざぁ赤いなだど。むかしとーびったり。 |
(後藤とよ) |
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