40 桃太郎むかしあったど。あるところに、おじいさんとおばぁさんがいたけど。おじいさんは山さ柴伐りに、おばぁさんは川さ洗濯に行ったど。そうしておばぁさんが洗濯しったらば、川上の方から大きな赤い桃と青い桃と流っで来て、おばぁさんは、 赤い桃、こっちゃこい 青い桃、そっちゃ行げ て言うたれば、赤い桃はだんだんおばぁさんの方さ寄って来たじし、青い桃は泣き泣き流っで行ったけど。そしておばぁさんは、まずヒョコヒョコと大きな桃持(たが)ってきて、お仏さまさ上げて置くべて、上げておいたらば、晩方なったれば、おじいさんは、 「いやいや、まず、こわがった」 なて、山から柴伐背負って来た。 「おじいさん、おじいさん、今日洗濯さ行って、大きな桃拾ってきて、おじいさんが来たら食うべと思って、お仏さまさ上げったぜ」 て言うて、 「ほんじゃ、飯(まんま)食ってから食うから……」 ていたら、そのうち何だかバチンと割れる音したれば、「オギャオギァ、オギァ」なていう音して、 「なんだ、おじいさん、赤ん坊の泣く音すんぜ」 て行ってみたれば、大した丸々とした真赤な顔した赤ん坊生れていた。 「いやいや、おじいさん、まずまず、赤ん坊生っでいた」 して、 「桃から生れたから、桃太郎と名付んべ」 て、桃太郎と名付けて、いや、食うにも飲むにも、メキメキメキと大きくなったどこだけな。そして、おじいさんが木割ってれば、木割り、おばあさんが水汲んでれば、水汲み、一生懸命で手伝って、そして子どもになったごんだど。 そしてある日、桃太郎、おじいさんとおばぁさんさ、 「鬼退治に行きたい」 て言うたもんだけな。そして「鬼退治に行くには、キビダンゴていうもの拵ってもらわねね」て、そんで、ほんじゃらばキビをはたいてキビダンゴに拵って、背負わせてやったようだけな。そしてずうっと行ったれば、山からガサガサ、ガサガサて来たの何だと思って見たらば、犬、 「桃太郎さん、桃太郎さん、腰に下げたものは何だ」 て聞いたようだけな。 「日本一のキビダンゴというもんだ」 「ほんじゃ、一つおれに呉れねが」 「呉れるぁええげんども、一つ食えばうまいもの、二つ食えばにがいもの。んだから一つしか呉れらんね」 一つもらって、 「おれも、鬼退治にお伴すっから…」 て、行ったようだけど。そして犬を連れて、そうして行ったば、またワサワサホイホイなて、こんど猿ぁ出はってきた。そして猿も、そこで子分にしてはぁ、キビダンゴ一つ呉っでずうっと行ったらば、こんどキジ。バタバタバタと飛んできて、またキビダンゴを呉っじぇ、そして子分にしてずうっと行ってはぁ、こんど向(むか)い眺めたら、鬼ガ島あるもんだから、まず一番先にキジがとんで行って、そして突ついて門を開いたどな。そしてやっとみな入って、こんどはキジは鬼の目玉突っついたんだし、猿はかっちゃく、犬は喰いつくして、みな退治してはぁ、宝物いっぱい取ってはぁ、そして車さつけてエンヤラヤー、エンヤラヤーとキジが綱引くエンヤラヤー、猿が後押すエンヤラヤー、犬が先引くエンヤラヤー。いっぱい宝物つんで来て、おじいさんとおばぁさん喜ばせて、一生安楽に暮したけど。とーびったり。 |
(大石きみよ) |
>>中津川昔話集(上) 目次へ |