15 三枚のお札あるところに、和尚さんがいて、弟子を頼んでおいたな、そいつぁ、「山さ、ワラビ採りに行きたい」 「んだげんども、あそこの山は危険な山だからやらんね」 て、和尚さまは言うたげんども、聞かねで行ったそうだ。そして行ってみたら、姉さまいたけど。そして姉さまと知り合いになったわけだな。そして、 「晩げ、おらどさ泊るように来て呉ろ」 て言わっじゃげんども、 「和尚さまに聞いて、伺って来ないと泊らんねがら」 て、そして寺さ帰ってきたそうだ。そして、 「こういうことあったから、和尚さまに手間もらって行って来たい」 て。和尚さまは、 「それは人間でもないから、何かの化けたのだから、やらんね」 て言うたげんども、なかなか小僧さんは聞かねど。 「そんじゃら、この札呉っでやっから、山でる札と、火ぁ出る札と、川出る札だ」 そしてそいつ三枚もらって行って泊った風だな。そして泊っているうちに、夜雨降ってきて、そしてこの屋根から雨だれ垂っだそうだ。 タンタン狸の顔面(つら)を見ろ どかて、雨だれ言うたら、それをやっぱり考えたそうだ。小僧さんは、タンタン、タンタンと垂ったのを、タンタン狸の顔面を見ろ、やっぱり眠ってやったべ。狸ぁ、それから小僧さん、特にあれしてみたら、狸であった。そしてはぁ、魂消て起きて、逃げんべぇと思ったら、 「どこさ行く小僧、おれぁ食べる勘定で連れて来た。んだげんど、今逃げらっでは困る」 て、抑えられっどこだったど。そして、 「逃げて行くのでない。カワヤさ行くのだから…」 て、そうして嘘語って出はったわけだ。 「そんじゃ、綱つけてやる」 て、綱付けてやった。そしてカワヤの柱さ綱つけて、小僧ぁ逃げて行った。なんぼおもっても来ないがんべな。そうすっど、後から追かけたわけだ。いまちいとで追っつかれそうになった。まず「山出ろ」て、その札投げたら、ちょうど小僧の裏さ大きな山出て、そしてはぁ、そこでまた小僧は先跳ねたし、後から山出て行かんねくて、手間とってだ。そしてまた追つかれそうになった。そしたらこんど、「火ぁ出ろ」て投げた札は火になって山一面に火になって、そこでまたまごついたわけだ。そして小僧ぁわらわら走っていたげんど、また追つかれそうになった。そうすっど、こんど、「川出ろ」て、その三枚目の札投げたど。そうすっと大きな川、どんどんと出て、こんどはまず川だから、漕がんねわけだな、狸。あっちさのぼり、上さ登ったり下さ下ったりして歩いているうちに、小僧は寺さ着いて、そして、 「和尚さま、和尚さま、今食れっどこだから、化物に食れっどこだから戸を開けてもらいたい」 て、そしたら、 「お前は、おれの言うこと聞かねで行ったから、戸開けらんね」 て、和尚さま、 「いや、そうしないで、どうか助けておくやぃ、今おさえられっどこだ」 そしてやっと、その川のぐるりに狸がいるうちに、和尚さまどこに行って、戸開けて生命助かったど。んだから小さい人は大きい人の言うこと聞かなねもんだ。とーびったり。 |
(男鹿てつの) |
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