13 古屋の漏れ 

 あるところに、じっちゃとばっちゃ暮していたど。そして夜、寝物語りしたそうだ。雨は降ってきて、あっちこっち、そこは漏(む)ってきたわけだな。
 そしてそのじっちゃとばっちゃは馬を立てて、仔とっていたど。その仔盗みたくて、馬喰、廊下にしゃがんでいたけど。そうすっどじっちゃとばっちゃの寝物語り聞いだ風だな。
「いやいや、なぁ、世の中には何も恐っかないものないげんども、古屋の漏くらい恐かないものは世の中にない」
 て、じっちゃとばっちゃ、年取ったから、修繕すんにひどかったべちゃ、くどいたど。そうすっど、馬喰ぁ聞いて、
「はてな、古屋の漏なて、なじょな獣だべな、おれもよっぽど騒いだげんど、見たことない」
 そうすっど、馬喰も古屋の漏おっかなくなった風だ。そしてしきりに雨ぁ降ってきて、表さ出て、雨のどこ、じっちゃ、ふたぐ積りで出たべな、そしたら、馬喰は魂消て、
「さぁ、こりゃ古屋の漏ぁ出てきた」
 そうしてはぁ、こんどは馬盗みやめて逃げだど。そうすっどこんどは、
「それ、泥棒だ」
 て言うごんで、じっちゃとばっちゃ追かけて、着物おさえたど。さぁ馬喰も古屋の漏につかまっじゃと思ってはぁ、急いで逃げる気だど。そして見たところぁじっちゃとばっちゃであったど。とーびったり。
(男鹿てつの)
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