96 大杉の秘密ここの天井の高いとこに、むかしヒノウサマというて大きな杉があったそうだ。そいつぁあんまり大きくて、酒田の海、日かげになって、そして酒田から魚、日かげになって獲れないと、たんと寄らねくて、木切り来て、切ってみたげんども、昼間切って、木っ端をここさ投げて置くもんだからな、そうすっどその木っ端、夜、みな細かな木衆ぁ、見舞いにきて、みな喰付けて行くごんだずも。そして元の形になって、大きくなって…。そしたれば、ミソハギの木は、仲間(なかば)さ入っでもらいたいて見舞いに木っ端喰付けに来たわけだ。そしたら、 「お前は木でない、草の方の味方だから、木の方さ、はめらんね」 て言わっだど。そうすっど怒って、切っていやった人さ教えたごんだべな。「お前は木でないから」て、はぎらっで来たから。「あの木はなんぼ切ったたて、木の王様だから、みな木の衆ぁ、お見舞いに行くじど、夜のうちに喰付けて来っから、なんば切ったって、もっかえすわけに行かない」。それから、「その木っ端を焚いた方ええ、そいつ一日切った木っ端を燃やす。そしたらこんどは、もっかえされっから…」 そしてやっぱり火焚いて、みな昼間焼いた。そしたらもっかえった。とーびんびったり。 |
(男鹿てつの) |
>>中津川昔話集(下) 目次へ |