91 南の山の馬鹿聟

 むかしあったけど。
 南の山なて、なんぼか開けねどころであったべな。あるところに、南の山から聟もらった。始めて舅礼に行ったときに、嫁と二人でお里帰りに行ったとき、不調法なこと語らんねから、
「おれ、陰にいて、親が向うで話すとき、肝要なこと話すとき、不調法なことでなく、向うで話したとき『さようでござり申す』て言え」
 て言わっで行ったどこだ。嫁と二人で…。
 あれこれて、お話申上げるわけだ。そんどき、肝要な話出たとき、「さようでござり申す」て言えと言わっで行った。ただそのしるしに、チンポコの先に糸縄つけて、肝要な話したとき引張っから「さようでござり申す」て言え、それから節穴などあったときは、こういうどこさは、「火伏札」でも貼っじど、大そう結構なもんだなて賞めっじどええなんて教えらっだ。節穴さ火伏札は大変ええがったども、馬の尻の穴あるもんだから、馬の尻にも、
「ここさも、火伏せ札貼っじどええ」
 て言うたど。
(後藤とよ)
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