85 南の山の馬鹿聟・馬の尻に札

 南の山のおんつぁ嫁もらって、嫁の家さ泊りに行ったれば、そこの家の床の間あって、そこさ穴あいっだから、
「こさ、ええ掛図でも掛けっどはぁ、これぁ大変にええ床の間になるて言え」
 て、嫁に教えらっで、こんどそこさ泊りに行ったど。そしたらば、家ずっと見せてもらったらば、床の間に節穴あるもんだから、
「いやいや、これは何か掛もののええなでも掛けっどはぁ、さっぱり見えねし、ええ床の間になるなぁ」
 て言うたら、そこの家のじさまは、「いやいや、これは馬鹿だなて聞いっだげんども、大した馬鹿なでない、大したええ聟だでこ」
 て喜んで、そこら家歩(ある)って、廊下さ行ったれば、こんど馬の尻尾ぶったでったけぁ、「おじいさん、おじいさん、この馬の尻さ穴あいっだから、こさも、その掛けものかけっどええ」
 て、そうして嫁とっかえさっじゃけど。
(大石きみよ)
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