72 角屋の三平むかし、角屋の三平とかいう人は、一人ぼっちで暮らしていて、今でここらで悲しがり(仕事きらい)で貧しく暮しったど。そしたら長者の娘、大した娘いて、それお嫁に欲しいげんども貧しくて、仕事ぎらいだし、来るって言わねし、もらうもさんね。そうしているうちに教えた人あったそうだ。三平に…。「年夜の朝げに早く起きて、暗いうちに神詣りに行って、神さまの高い杉の木の上さ、提灯、山鳥の足さ提灯つけて、そしてその鎮守詣りに長者が来て、拝(おが)申したとき、神さまになり代って『長者、長者、角屋の三平に娘を呉れないずど、長者の跡はなくなる』て言うて、その提灯飛ばしてやれ、そうすっど、その、飛んで行んから…」 そいつ聞いて、杉の木の上さ登って、提灯を持(たが)って、提灯さ火点けて、長者、拝(おが)申すとき、そう言うて、 「長者、長者、角屋の三平に、お前の娘の小菊を呉れないど、長者の跡ぁ絶えるぞ」 て言うて、提灯とばしてやったど。そうしたら、長者、「はい」て、神さまさお礼釈して、そして呉れ申すて、礼釈して帰ってきたわけだ。 「光りものは飛んだ」 て言うたそうだ。そして帰って来てはぁ、その娘を三平に仲人たのんで呉れたど。んだから賢こい人には敵わね。とーびったり。 |
(男鹿てつの) |
>>中津川昔話集(下) 目次へ |