70 笠地蔵

 むかしあったけど。
 あるところに、じじとばばいて、じじぁ正月買いに、まいどミノを着て、笠をかぶって行ったけど。茣蓙を着て。そして行ったれば、地蔵さま雪にかかって、雪まびれになっていたもんだから、あんまりむごさいと思って、笠をかぶせて茣蓙を着せて、
そしてはぁ、買物しねではぁ、家さもどって来て寝っだれば、夜になったれば、
よいともしょ、よいともしょ
じじの屋形はここだべか
ばばの屋形はここだべか
 ていう音ぁするなだど。
「音ぁ何だべな、ばば、ばば、何か引張って来たような音ぁする」
 どかて、聞いっだら、だんだんその音ぁ、「よいともしょ、よいともしょ」て何か引張って来たような音ぁする。そのうちに「ドサドサン」と何か家の中さ投げ込んだような音ぁする。そして見たれば、いや仰山な、いっぱい宝物ぁ、地蔵さま持して呉っじゃけど。そして次の日その宝物眺めっじゃれば、隣のばば来て、
「おお、したり。何ごんだまず、この宝物なにしてもらったもんだ、どっからもらった」
 なて言うんだから、
「これ、地蔵さま、あんまり寒そうだから、着せたりかぶせたりしてきたらば、これ持って来て呉っじゃどれこ」
 そしてこんど、
「まず、ほんじゃらば、おらえのじじも、灰まらばりはじっていっから、やって見なね」
 て、そして行ったれば、地蔵さま、さっぱり雪ぁないずうけつげんどはぁ、びりびりとかぶせて着せたりしてきた。そしたれば、夜何か引張って来た音すっから、何かいっぱい宝物呉っじゃがなぁていたらば、さっぱり宝物なくて、瀬戸かけでござるの、さまざまな投げ込んで行ったけど。んだから人の真似てするもんでないけど。とーびったり。
(大石きみよ)
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