66 こぶとり

 むかしあったけど。
 あるところに、おじいさんとおばぁさんがいて、両方のおじいさんがコブ持っていだけど。おじいさんがある日、山さ行って畑仕事して、雨ぁ降ってきたもんだから、洞(ごうら)さ入って寝っだれば、鬼ぁ出てきて、いや一生懸命できて、踊るは歌うは、とてもおじいさんがこたえらんねくて、嵌(はま)って踊って歌って、はまったど。
そしたれば鬼ぁ、
「これは面白いじじだから、頬たぶさ喰付いてるコブとって呉れっから…」
 て、取ってもらったごんだけな。そして家さ来たらば、隣のばば、
「火呉ろ」
 て来て、
「なんだもんだ、こっち家(え)のじじぁ、コブさっぱりなくしてしまったもんだ」
「んだ、おらえの山さ行って、こういうごんで、鬼どもぁ来て、あんまり歌ったり踊ったりするもんだから、おれも混って、そして唄ったり踊ったりしたれば、コブ取って呉っじゃど」
「ほんじゃ、おらえのじじもやらんなね、灰などばりはじっているから、やんなね」
 て、次の日、じんつぁばやったど。そしてまた赤鬼、青鬼来て、一生懸命で踊ったり歌ったり、じじぁ、
「こん時だ」
 て、出はって踊ったげんど、大した下手なごんであったど。踊りぁ。
「なえだ、じじぁ、昨日(きんな)のじじと違って下手だ」
 て、その前の日取ったコブ、ベダンと喰付けらっで、そして両方さコブ喰付いたど。とーびったり。
(大石きみよ)
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