62 ねずみの金干し

 山さ火野(かの)うないに行ったど。そしたらねずみ、穴から出はって来て、いっぱい札喰わえてきて、ねずみは金干したど。そこを煙草のみながら、金干し見っだどな。そして金いっぱい干して、しまいに人形立ててって、
「雨降って来たら教えろよ」
 て、立ててったって。そしてその暇に、金かっぱらって帰って来たど。そいつ金いっぱいかっぱらって逃げてきたもんだから、家さもどってきて、それを話したところぁ、その隣の慾ふかばさま聞いでって、
「おらえのじじもやんなね」
 て、やったわけよ。そして火野うないに行ったば、やっぱりねずみ穴から、いっぱい札喰わえてきて、干したって。そして人形立てて、
「雨ぁ降って来たら、教えろ」
 て、その人形立ててった。そして。これぁしめたもんだと思ったげんども、小便ぁ出てきて、小便たっだところぁ、皆ひっかかったってよ。そしたば、
「雨よ、雨よ」
 て言うたば、みなねずみぁ出はってきて、しまってしまったてよ。そうして、スッカラピンになって家さ戻って話したところが、そのばばに、しこだまおんつぁっだってよ。
「そのぐらいの腐れじじ、あったもんでない」
 て、おんつぁっだって。んだから、あんまり慾ふかするもんでないて教えらっじゃなよ。とーぴったり。
(鈴木ひろ)
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