100 弘法大師

 弘法大師ざぁ、悪い人いましめて、ええ人さ忠義する人だったど。ここ米沢に弘法大師さま、中田では芋を石にしたり、塩野ではみな、水、塩水にして行った。
 下女ぁ、お正月に餅拵うな、旦那に、弘法大師に呉れろて言うたときに、下女は下女だから、たんと貰わんねがったがして、半分とって半分弘法大師さあずけたわけだ。そうすっど弘法大師は歌詠んだど。十五日たったど。
弘法もいかなる旅もしてみたが
十五夜の月はがね月これも初なり
て詠んだごんだど。そうすっど下女も賢いもんであったべ。
雪にかくれてここに半分
て、自分しまったげんど、歌詠まっで出したど。
(男鹿てつの)
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