8 むかえ通るは

むかえ通るは熊野のお導者か
肩にかけた カタビラ
片裾は梅の折り枝中はこのその橋
そりはしを渡る人とて足袋脚絆に
こぎりこの小包 誰にもろた小包
みさか街道の庄屋が娘にもろた小包
みさか街道の庄屋の娘は日本手ききと
聞えた
一つでは お乳飲みそめ
二つでは 御飯食いそめ
三つでは おじょじょ履きそめ
四つでは 綾のとりそめ
五つでは お針持ちそめ
六つでは 糸のとりそめ
七つでは 機の織りそめ
八つでは 金欄たたんで
九つで 庄屋に売られて
十で 大阪へ登った
大阪ところはつらいところで
小麦七臼大麦七臼お手に豆が九つ
ここの一の豆にたまげて
ふるさと恋し こいしながら
お寺の前さ踊りが立った
どっから立った江戸から立った
江戸一番のたてしの娘
踊りの中で たとがみ拾ろた
何だと思って開いてみたら
糸とり習え 機織り習え
小袖の小褄を縫い習え
(井上元一)
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