南の山の馬鹿聟話白禿餅

　馬鹿聟がよ、嫁の実家に行ったら、一生けんめいで、うまい餅食せっかと思っ
ていたどこさ、子ども来て、そして、
「何か食う」なて、お料理しったどこさ来て言うのだど。そしたら
「こいつ、恐っかないから食（か）んねぞ、恐っかないから食んねぞ」
　て言うたど。そしたらこんど、
「何一番好きであった」て、馬鹿聟さ言ったそうだ。馬鹿聟は、
「牡丹餅好きだ」
　ていうから、牡丹餅、一生けんめいに作って食せで、
「こんどは何餅ええ」て聞いだら、その餅には手出さねがったど。恐っかないと
言うてだがらだべ。
「そんがえに何も食ねごんだら、こいつ家さ持って行って、みんなさ食せるよう
に」
　て、苞（つと）コさ入っで呉（け）らっじゃど。そしたらコーモリの先っぽさ、その苞さげて、
恐っかなくて恐っかなくて、見い見い行ったげんど、こんど途中まで来たらば、
その苞コ、ひっぱだきつけたど。そしたら餅白くなったど。その餅がよ、
「この畜生、白っぱげで」
　て、またみな餅そっちゃこっちゃひっぱだきつけて、みな食んねぐしたど。
（平井とよ）
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