舌切雀むかしあったけど。あるどころに、おばぁさんとおじいさんがいだっけど。おばぁさんが一生けん めい糊張りしたら、おじいさんは山さ柴刈りに行ってよ、そして山から帰って来 たら、鳥篭、いつもここさ下げていたに、空なもんだから、どうしたんだと言う たら、 「一生けんめい、糊張っかど思って張っていたら、糊みな舐めてしまったから、 あんまりごしゃげるから、舌(べろ)切って逃がしてやった。 て言うたそうだ。そして、 「んじゃ、どごさ行ったんだか」 て、おじいさんに、めんごがらっでいたもんだからな。次の日、こんど山さ出か けたど。 舌切雀、お宿はどこだ。 歌いうたい行ったど。ほして行ったら、竹やぶから、 「おじいさん、こっちだ、こっちだ」 て、呼ばらっで行ったど。そしてら喜んでその雀、 「おじいさんだ、おじいさんが来た」 て言うたら、出てきて、兄弟衆からみな出て、もてなししたど。そして酒肴で もてなして、こんど歌踊りで大変なだったど。 「あまり暗くなっても、おばぁさん心配すっから帰るはぁ」 て言うたら、 「お土産に、重いツヅラええか、軽いツヅラええか」 なて言わっじゃがら、 「年寄りだから、軽い方もらって行くべはぁ」 て、貰って来たてよ。そして家さ来てみたば、いやすばらしいものばかり入っ ていだったど。宝ものなぁ。したば、そのおばぁさんも、 「ほんじゃ、おれも行ってくる」 て行ったなてな。そしたら、「雀、雀、お宿はどこだ」て行ったら、竹やぶ分っ て行ったら、また御馳走さっじゃど。そして、 「おばぁさん、お土産何ええか、重いのええか、軽いのええか」 て聞いたら、 「おれ、力あっから重いツヅラもらって行くかはぁ」 て言うたど。そしたらその重いの貰って途中まで。家まで持って来(こ)らんねがっ たど。重たくて、そして途中で開けたら、いや、抜け首だの、お化けいっぱいで よ、そこらなめらっじゃり、食っつがっだり、血だら真赤にして家さかけ込んだ ど。どーびんと。 |
(平井とよ) |
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