猿蟹合戦

 むかしあったけど。
 猿、柿の種子拾ったど。蟹がおにぎり持(たが)っていたんだけど。そしたらその猿が、
「蟹君、蟹君、わたしの柿の種子と取換えっこしろ」
 て言うたど。
「そがな柿の種なて食んねくていらね」
「こいつ植えて毎日水掛けっど、すぐおがっから、そうすっどじきに実(な)る」
 て言わっで、そして取換えて植えて、毎日水かけて、
「早く芽を出せ、柿の種子」
 て言うたば、芽出だって。そしてこんど、
「早く葉を出せ、柿の種子」
 て、毎日水かけたら葉が出たど。そしてだんだん、だんだんしたら、
「早く実をなれ、柿の種子、早く実をなれ、柿の種子」
て、一生けんめいに慈生したらは、すぐ実なって、柿の実もぎに蟹は登らんね
がったど。したらそこさ、猿来て、
「蟹さん、何しった」
「柿の実なったげんども、捩(も)がんねくて見っだ」
「ほんじゃ、おれ、捩いで、呉(け)っから……」
 なて、上さあがって行って、もいで食って、自分ばりみな食って、蟹が、
「猿さん、おれさも捩いで呉ろ」
 て言うたらば、青いどご、ぶっつけたど。みなぶっつけて、そこら怪我したど。
蟹がよ、そして家さ帰って寝っだら、臼が来て、
「蟹さん、何してそがえに泣いてる」
 て言わっじゃんだけど。「こういうわけだ」て、今まで猿にさっだごどみな教え
だど。そうすっど、
「ほんじゃ、おれ仇とって呉(く)れっから」て。そしたらこんど、卵が来たど。そし
たら、蜂も来たど。
「ほんじゃ、三人で仇とって呉っから」
 て、その臼達、猿の家さ、みなかがんだど。臼が戸の口の上さあがって、蜂が
味噌桶さ入ってだど。卵が炉さ入ってだど。そしてそこさ猿帰ってきて、「さむい、
さむい」どがて、炉、ほげだど。そしたら卵はんじげで、顔さみななったもんだ
から、「いや、痛い」なて、味噌桶の味噌塗っかど思って、そしてだら、蜂に刺さっ
じゃど。そしたら猿、こんど逃げんべと思ったら、上から臼落っできてつぶして、
とうとう猿殺さっじゃど。んだからいじわるするもんでない。どーびんと。
(平井とよ)
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