33 弘法清水と弘法大根

 円徳寺の前の清水は弘法さまがこっちに来たとき、玉虫という家さお泊りに なって、一夜厄介になったもんだから、お礼のために、
「こっから、水出るようにして呉(け)っから」
 て、杖でちょこちょことついたら、出た清水だ。そのために夏も枯れず、そこ には蚊も蠅も出なかったそうだ。
 中田(米沢市中田)では弘法さまが喉が乾いて、大根洗いしった人さ、
「大根一本呉んねが」
 て言うたどな。そうすっど、
「こいつは数えて洗えて言わっだんだから、上げらんね」
 て。そしたら、そういうて娘が大根を弘法さまに上げねがったから、〈木大根〉 になってしまったど。
(小関清輝)
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