20 南の山の馬鹿聟 -馬の尻に札-

 南の山さ嫁に行ったんだな。
 その亭主があんまり利巧でなかったから、里帰りのとき亭主と一緒に来たそう だな。そうすっど嫁は自分の亭主があれなもんだから、
「家さ行ったとには、あんまりやたらなこと言うな。木っ節穴など見つけたら、 そこさ暦でもかけたらばええがんべ」
 と、こういうことを話したそうだな。そうすっど聟は木っ節探ねっけんども、 無かったていうたな。そして今度、親父が馬大好きなもんだから、
「おら家(え)で、こういう立派な馬買ってだ」
 て、見せたていうたな。そうすっど、聟があっち撫で、こっち撫でして、
「ええ馬だ」
 なんていだっけど。そしてずうっと尻の方さ行って、尻の穴見つけたど。
「あら、ここ、木っ節穴だな、ここに暦でも貼ったらええ」
 て言うたて。それを聞いて娘、真赤になったって。
(小関清輝)
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