19 子守唄内通六部さんは、毎日、あっちこっち廻って歩いて、一銭とか二銭とかの金をもらっ て、お金をでっしり持(たが)って歩きあるきして、あるどこさ泊ったわけなんだな。ところが、そこの家では六部さんを喜んで泊めてくれたど。そして夕飯を御馳 走した後にな、隣からまたお客さまがきて、そのお客さまと一緒に家の人がお茶 を飲んでいる。そのうちに、 「六部さん、休んでおくやい、休んでおくやい」 と言うから、六部さんもお湯ももらったし、お茶も御馳走になったし、寝床も のべたから、休んで呉ろというから、 「んでは、休ませてもらうか」 て、六部さんは寝たことだど。そうして六部さんが旅のつかれですやすやと眠 たげんども、その家のおかみさんと、隣のお客さまとは、こもこも、こもこもと 何喋っているもんだか、目、あわいに覚ましてみっど、こもこも語っているわけ なんだな。そしてそこの家に一人の子守りこがいだったてよ。 その子守りこが言うには、おぼこを子守りしながら、小唄を歌ってるど。小唄 の話を聞くじど、同じことを何べんも語っているから、耳をすまして聞いてみた ところが、 〈リンカジンとカジンと、ゴンすることをモンすれば、リョソウをセツすとゴン するぞ。クサのカンムリおっとって、ヤマにヤマをかさねろ〉 という子守りこの唄だったどな。 それから六部さんが歌の文句をよく考えてみっど、 〈隣の家人と家の人がお話していることを聞くじど、旅の六部さんを殺すと言っ てんぞ。早く出て行け〉 ということだったど。そんでどーびんとん |
(斎藤捷太郎) |
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