13 食わず聟むかしむかし、じじとばばいだったど。そして女のかわいい子どもいだったど。 そしたらそいつ大きくなったら、聟とって呉れんなねと思って、じじとばば、う んと楽しみにして育てたそうだな。そうすっど大きくなったもんだから、「おらどさ呉んにゃえか」 とかて、みな言わっじゃど。 「んだげんども、おらえでは聟とんなだから、呉れらんね」 どかて言うてだそうだな。んだげんど聟も体格のええ、器量のええ、御飯の食 ねようなどかて、無理な注文だったそうだな、稼ぐべし、体格ええがんべし、器 量はええがんべし、御飯も食ねような聟は誰もいねってよ。いなかったそうだ。 ある日、仲人してくんねがていう者がきたっていうのだな。体格ええもんだっ たど。 「お前、御飯食ねで稼がれっか」 「いや、御飯なの食ねで稼ぐどこでない。こげなええ人と一緒になっこんだら」 ていうわけだったそうだな。 「んじゃ、ええがんべ」 ていうわけで聟にしたど。なるほどこいつは御飯食ねで稼ぐって言うものな。ただ何日(いつか)も続けたもんだから、じじ、ばばは不思議に思ったずもな。 「御飯食ねで稼ぐざぁ、奇態なもんだ。願いごとかなったげんど、何か不思議な ことないべか」 て、寝ずに様子うかがっていたどな。そしたところ夜中に起きて、御飯炊きすっ こんだど。 「何するもんだべ、御飯炊いてから」 て見っだら、にぎりめし拵(こしや)ったど。そしてにぎりめし片っ端から平らげだとい うんだな。ほして後、鍋釜始末すっどこを、じさま見つけたど。そうすっど気ぁ 付いて、聟はにわかに角出はって来たどな。口はさけて鬼になったど。そうすっ ど、じじは魂消て逃げだてだな。なんぼ逃げても追っかけて来るってだな。その 鬼は。そして野を越え、山越えて逃げだど。とても怖わくなって逃げ通さんねく ていたところに、ヨモギと菖蒲の生えっだどこあったど。そこさ、さっと隠っだ ど。そしたば鬼はその後、トットッ、トットッと行ったど。そんで菖蒲とヨモギ は魔除けだ。そいつが丁度五月の節句だったど。んだから、五月節句には菖蒲と ヨモギさすんだど。 |
(小関清輝) |
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