3 親棄山

 むかしあったけど。あるところで、親を六十一になっど山さ置いて来たもんだど。ある孝行息子も、母親が六十一になったので、山さ置いで来(こ)なんなぐなって、
「おっか、おっか、切ないごんだが、置いで来ないば、殿さまにおんつぁれっから、おっかぁ、明日山さ行がなんないなぁ」
 なんて、いっぱいうまいもの食わせで、次の日はおっかぁば背負(おぶ)って出かけたど。そして山路になって、道もなぐなったど。遠がい遠がい山さ置いで来(く)んなだど、薮漕(こ)いで行ったら、おっかぁは、背負(ぶ)さってで、柴ぽきりぽきり折んなだど。息子は、「こんなごとして、戻ってくるつもりだべか」なんて考えで、大きな木のあっどこまで行っては、そごさ降ろして、
「おっかぁ、悪いどもなぁ」
 なんて、泣き泣き帰んべど思ったら、おっかぁは、
「兄にゃ、兄にゃ、帰るどこ分んないど思って、柴、折(お)しょり折しょり来たがら、それ見で、迷わねよに、行げよ」
 て、言わっだので、息子は、「こんなありがたい親、とても置いで行がんね」て背負って帰り、縁の下に孔掘って隠しておいたど。
 そのうちに、殿さまがお触れを出したど。「誰でも、灰で縄を一把なった者には、何でもいいもの呉れる」ど。そしたら息子はおっかぁにそっと相談したど。
「おっかぁ、灰で縄なんて、なじょにしたらなわれんべ」
 て。そしたら、おっかぁは、
「縄なって、そくっと焼けばいいごで」て教えだど。そして息子は作って、殿さまさ差し出したば、殿さまは「いや、賢こい、賢こい」て、なんぼか賞めで、 「何でも望みのほうびくれるから、申してみろ」どいったど。息子は、
「山さ拾てるおっかぁ、欲しい」て言ったば、殿さまはその親孝行もほめられて、それからはその国で、六十一になっても親ば捨てでこないでもよいことになったけど。むかしとーびん、さんすけびったり釜の蓋、灰でみがけばいい銀玉、なぁ、さんすけふんはい。


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