89 御詠歌の昔話(2)

          七番大和国東光山岡寺
       けさみれば つゆおかでらのにわのこけ
           さながらるりのひかりなりけり
 むかし、大和国に「おか」という女ごが居て、ある旦那さまで、女中をしていて、時々乞食が来ると、旦那のものはあっても、自分がくわせてもらう分のおまんまをめぐんでやり、その時のために水尻に袋を下げて置き、さまざまなものが溜るので、それを夜になると鍋に入れてぐつぐつ煮て食ったど。
 それを旦那さまが見て、夜になって誰もいない時、人にかくれて何かうまいもの食ってんべ、よし、今夜は見てくれんべと、また煮ている頃起きて行って、やにわに蓋とってみたり、何が何やらわかんないものを煮てたのであったど。そんな人であったので、死んでから、岡寺に祀られたど。


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