78 一休和尚(2)

 むかしあったけど。
 都に紫の大徳寺というお寺があり、そこに賢こい和尚さんで一休さんという和尚さんいだっけど。その和尚さんと大変仲よしのお侍で、お上の罪人の首切り役だった久米の平内という強いお侍がいだっけど。
 ある日、雪の降る日、お寺へ遊びにきて、いろいろ話の末、和尚さんが、
「平内や、お前も大抵にして、首切りなど止めてはどうか。そうでないど、お前に嫌われた人のうらみが掛かるぞ」
 て言ったど。そうしたら、平内は、
「おれは何も悪くない。お上をうらむがよい。お上の命令でやってるんだから、うらむなら、お上をうらむがよい」
と言ったど。和尚さんは、
「ああ、そうか、そうか」
 て、さからわず縁側に立たれ、
「平内や、あまり竹に雪が掛って重そうだから、落してくれないか」
 て頼んだど。平内は「はい」と気易く立って庭に出て、竹の雪をはらったど。そしたら竹はピンとはね上がる時、平内の体に雪がばさっと掛ったど。そしたら和尚さんが、「どうだ平内、命令したのは、おれだが、雪をはらったのはお前だ。そのお前に雪が掛かったでないか」と言われて、はじめて平内も悟り、お弟子さんになり、自分が首切った人々の冥福を祈り、一生を送ったけど。むかしとーびん。


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