68 股大根

 お大黒さまという人は、何ぼか餅の好きな人であったずも。そしてあるとき、招ばれて行って、あんまり餅食ったもんだから、腹切(せつ)なくてはぁ、うんうんうなって寝てだごんだど。そうしたば大根売りのおっか、通りかかったど。
「おいおい、おい、大根一本ゆずって呉ろ」
 て、寝てて、叫(さな)ったど。
「いやいや、今日のなは、注文でとてもゆずらんね」
 ていうたど。
「そう言わねで、おれぁ、あんまり餅、昨日食って、切なくてとても起きらんねどこだから、どうか一本呉っでおぐやい」
 て、こういうたど。んだども、見てたけざぁ、
「いやいや、二股大根あるから、そうせば本数は何本と約束してきたなだから、呉れらんねども、この二股大根さいで、ほんだら呉っで行くがら」
 て、二股大根さいで、食って、その大黒さまが大変よくなって治ってあったど。命拾いしたど。んだから、大黒さまは二股大根、そのためにお供えするもんだけど。むかしとーびん。


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