63 食われた餅

 むかしあったけど。
 和尚さんと小僧二人いでやったど。そして和尚さん、餅、他所からもらって来たど。
「こりゃ小僧にくれっど、おれ腹いっぱい食んねもの、土尾の方に何か見せもの来たずから、そこさやって、それから、おれ焙って食うべ」
 て、そう思って、
「小僧、小僧、にさだ二人ではぁ、今日、土尾さ遊びに行ってこい。暇くれっから」
 て、出してやったど。と、小僧だちも餅もらったこと知ってたもんだから、
「こりゃ、和尚さま、おら居ね後に食う気であんめぇか」
 そう思ったど。そしてまず、そこらまで行って、ちいと油売って、和尚さま焙り出したような頃、戻ってきたど。そして下相談したずもの。
「お前、先に声かけろ。おれ、この節孔から和尚さま、どさ隠すか見てっから」
 こう相談して、そして節孔から一人の小僧はのぞっこんでいたど。ちがいない。和尚さま、焙っていたそうだ。ワタシさ。そうすっど一人の小僧、
「和尚さま、和尚さま、今来た」て、廊下で声かけた。
「いや、早く来らっだ」と思って、和尚さま気ぃもんで、囲炉裏の灰ほげで、そさ、みなフクレ餅埋めてしまったど。そしてそれ、節孔から見っだ小僧、こんど廊下さ行って、
「こういう風にしたわ」
 て、教えたど、別な小僧に。そして二人で入って行ったど。
「ひどい早く来たな。にさだ、どんなこと見て来たや」て。
「面白くないけがら来たはぁ、和尚さま」
「ほんだら、どんなもんだけ」
 そうすっど、小僧たち二人で火箸つかんだずも。
「こんなこと、したけなぁ」
 て、囲炉裏つっついたら、みな餅、火箸さ刺さって来てしまったど。そうして小僧たちにみな食わっであったど。ほだから、食い意地などしないで、小僧にも分けて食せれば、和尚さまも食ってあったども、みな小僧に食(か)っであったけど。むかしとーびん。
「集成 533 焼餅和尚」
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