57 医者と鍛冶屋

 むかしあったけど。
 お医者さんと鍛冶屋と一緒に死んだごんだど。そしてはぁ、道づれになって、三途の川や、あれを通り抜けて行ったど。そしたらこんど、エンマ大王さまに、
「お前たちは生きてるうちに人さまのためにもなったべども、金も大変にとったもんだから、ただなど浄仏させらんね」
 て、そしてこんど、あれだずもの。「槍の山さのぼれ」て、こう言わっだごんだずも。そしたば鍛冶屋、一晩げのうちに金のワラジ作ってしまったど。そして、お医者さんと二人、金のワラジ拵えで、その槍の山のぼったど。
「これは困った人、これでは仕様ないがら、煮立湯でも入れる他ないな」
 と、こう思ったど。それからこんど、釜さお湯わかして、そさ入れることにしたど。そうすっど、ええお医者であったべちゃえ、体中塗っじど、火傷のしない薬拵えだごんだずも。そしたばさっぱり火傷もしないでケロッと入っていっずも。いや、こんでは仕様ない。
「お前だは、やっぱり世の中さええことしたせいでそうなんだべがら、浄仏させろはぁ」
 て、そう言わっであったけど。むかしとーびん。
「集成 442 閻魔の失敗」
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