55 寝言兄弟

 むかしあったけど。
 男の子どもばっかり三人いて、毎晩同じ寝言語る兄弟であったど。そして兄の方は、「そーそとござった」ていう寝言であったど。それ、泥棒が知しゃないでそのこ家さ入って、一つ何か盗むべと思って行ったど、軒場まで。そしたらちょうど寝言の始まる時分であったど。そして兄始めたずもの。
「そーそどござった」
 て。そうすっど泥棒は、「これは見つけらっだな」と思ってしゃがんだど。と、二番目はこんど、
「しゃがたまってござった」
 て、そうすっど、〈いや、こんでは駄目だ。見つけらっでしまった〉と思って、逃げ出したど。そしたら一番小さいのは、
「どこまで行っても、テンビン棒」
 て、こういうたど。そうしてはぁ、泥棒〈いや、こんなおっかない家さ、二度ど来らんね〉て、そう思ってはぁ、来なぐなってあったけど。むかしとーびん。
「集成 385 三人屁」
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