51 枯木見舞 ― 南の山の兄んにゃ ―

 むかし、あったけど。
 南の山の兄んにゃ嫁もらったど。ほして二人で正月礼に行ぐちゅうだど。そしたれば、家の衆、
「さあさあ、あの、向うの家さ行ったら、立派な焼き物あっちけがら、それ賞めろよ。南京焼火鉢だっけがな」
 ていうから、
「こう、はんじぇでみて、ええ音すんべがら、そん時、そういうて賞めろ」
 て教えらっで行ったど。そうしてはぁ、行って、
「結構なお正月でござる」
 なて、まず挨拶したど。やっぱりその火鉢出でであったど。ほして、はじえだら、チーンと音したど。
「いやいや、ええ火鉢だごと、これは南京焼だべか、唐焼だべが」
 て、こういうたど。
「南京焼だ」て、はぁ、そこの親父、たいへんに得意気だど。
「おやおや、この野郎、馬鹿だと聞いてたが、そんがえ思ったほど馬鹿でもねえぞ」
 て思って喜んだど。そのうち寒い日でもあったもんだからはぁ、じさま寝っだなな、起きてきたど。
「いやいや、さむくてさむくて、ちいと腹あぶりすなね」
 て起きてきて、立て膝して、もったもの出したど。吹きの寒い日なもんだから、てろてろに光ってだど。ほうすっどその兄んにゃ、
「これも、はじぐなだべか」と思って、
「南京焼だべか、唐焼だべか」
 て、こう、はじいだずも。さあ、痛くていたどこ、はじがっだもんだから、じさま、「いたい、いたい」て、ちぢんでしまったどはぁ。それみたば親父はごしゃえで、
「こげな聟さは、とても娘呉っでおがんね」
 て、取っぱがさっで、しおしおと家さ帰ったけど。むかしとーびん。
「集成 337 枯木見舞」
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