48 孝行息子の藤六むかしあったけど。父親と息子いで、その息子、藤六と名付いであったど。んで、こんど父親が病気になって、寒のうちに寒のうちの鮒食だいの、たけのこ食だいのっていうごんだずもの。んで、 「蒲沢さでも行ったら、あるがしら、行って見でくっからなぁ」 て、出て行ったど。 そうして山の神に根雪浅いから、ここらにあっかと思って掘ってみたば、見つけだど。まず、たけのこ掘って、 「いや、まずええがった。これは、筍は手に入ったども、鮒はとられんべかなぁ」 と思って、蒲沢沼さ来てみたど。そうしたらざり氷張っていたずも。そうして、 「これは困ったなぁ」 と思って、まず、帯といて自分ぁ腹押えつけで温めたど。その氷なぁ。ほうしたば何だかゆるんだようだと思って、唐鍬で叩いたど。そうしてかましたば、鮒ひょつんと上がって来たずもの。 「いや、ええがった。鮒も採れだし、帰んべ」 と思って来たど。そうしたば、まだお日様あるつもりなな、暗くなってしまったずも。 「困ったごんなもんだ。だいたい、こっちの方角なようだけども」 て、とぼとぼと来たば、向うに灯り見えっど。 「いや、こんなどこに家あったけが」 そう思って、まず松灯の一本ももらうかなぁと思って寄ったど。ほして、「こんばんは」ていうたば、年寄りの親父いでやったど。ほして、 「まず、暗くなって行かんねぐなったから、あまりおしょうしだども、松灯一本呉っでおぐやんねが」 ていうたば、 「ええどこでねぇぜ。んだども松灯呉れる代りに、おれ頼みも聞いで呉ろ」 こう言わっだど。 「ええ、あまりええ」 ていうたば、 「おれ、つれあい、まずきんな昨日死んだども、この雪ではぁ、おれ仕末さんねでいるどこだから、悪れども、雪の上、穴掘るもひどいし、お前持って行って川さ投げてくんねぇか」 て、頼まっだど。ほして、 「困ったもの引受けたもんだ」 と思ったどもはぁ、灯しもらわねば来らんねもんだから、引受けて背負ったど。重たいがったども、来て、ほしてあんばいええ崖あっから、ここらで投げ下ろすかと思って、おろす気になったど。 「藤六、藤六、投げんべと思うなよ」 て、こういうずも。ほうすっど仕方ないがら、いまつうと背負ってと思って、背負って、こっちさ来た。またあんばいええどこあっから、おろすべと思うど、また、 「藤六、藤六、投げんべと思うなよ」 こう言うずも。仕方なくてはぁ、つい家さ来てしまったど。 「明日なったら、誰も起きねうちに、前の川さ流すべ」 そう思ってはぁ、庭土間さおろして、そうして入ったど。ほしたば、何、暗いなでなく、まだ薄明りのあるうちであったど。ほしてまず家さ入って、 「おどっつぁ、おどっつぁ、鮒も筍も採ってきたぜ」 そうして食わせたど。喜んで、 「寒の鮒はやっぱりうまい」 なてはぁ、喜んで食ったずもの。ほして次の朝げ、 「まず早いどこ、みんな起きねうちに背負って行かんなね」 と思って、庭さ行ってみたど。そうしたば、庭いっぱいさ金ひろがっていだったど。 「いやいや、これは昨夜の、死骸、ないくて、金ばりだ」 て、そういうたれば、父親は、 「お前、親孝行なさ、神さま授けて呉っだんだごで」 そう教えて呉っだけど。むかしとーびん、びったりさんすけ。 |
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