41 三枚のお札むかしあったけど。おら家(え)のあたりのようなお寺の小僧だちいて、二人、裏の山さ、栗拾いに行ぐてゆ言ったど。そしたば和尚さま、 「うらの山には山姥いっから、このお札呉っでやっから、追っかけらっだどき、投げろよ」 て、三枚お札もらったけど。そうして二人で行って拾っていだど。そうしたば晩方なるまで忘せではぁ、拾っていたずも。そうしていたば、何だか婆さま来たずもの。 「にさだ、こんがえ晩方、帰らんねんだから、おら家さ入って泊まれ」 て、そういうて呉れっど。そんな恐っかない婆でもなさそうに見えるもんだから、三人で行ったど。 そうして、飯ごちそうになって寝るごどになったど。そして寝て、一人の小僧、ひょいと婆さんのどこさ手やったば、もじゃもじゃていうずもの。 「さぁ、和尚さまに教えらっだなは、このごんだな」 と思ったど。ほうして隣のばつっついてはぁ、二人ではぁ、 「ばば、ばば、ばっこ出てきた」 て、こういうたど。 「ほだが、さぁ、ほだら逃げっど悪れがら、待て。紐ゆ結つけでやっから」 て、そうしてはぁ、紐結(ゆ)つけらっだずも。ほして便所さ入ったふりしてはぁ、キンカクシさ、その紐結っつけたど。ばばぁ、 「まだだか」ていうと、「まだだて言(ゆ)うて呉ろよ」て、そういうて逃げだんだど。ほうして婆さま、引っぱって、「まだだか」ていうど、「まだだ」て聞えっずも。ほなもんだから、いだども、何度もしても同じ音すっから、起きて行ってみたど。そうしたば、キンカクシさ紐結つかっていたずもの。 「野郎べら、逃げたなぁ」 て、こんどは追っかけたど。ほうして逃げたは逃げたは、そのうちにはぁ、追っかづかれそうになったずもの。ほうすっど、 「火になれ」 て、お札一枚投げたど。ほうしたば、ぼうぼうと燃えたど。こんど婆さま、熱っちぇもんだから、しばらくそこ通れねでいるうちに、小僧たち、走って姿見えなぐなっど消えたど。そうすっどまた婆さま、追っかけてきたずもの。こんどは仕様ないから、 「山になれ」 て投げだど。大きな山になっだずもの。それ、婆あは越(こ)いではぁ、また追っつかれそうになったど。こんどは、 「川になれ」 て投げて、ほうしてお寺さ、すたすたと駆け込んだど。したば和尚さま、シュミ檀の下さ隠してくっだど。 そして、婆さま、廊下まで来て、 「和尚、小僧逃げ込んだべぁ、出せ」 なて、しゃなっど。和尚さま、知しゃねふりして、本尊さまにお経上げっだど。したば、婆、そのお経に負けて逃げて行ったけど。むかしとーびん、びったりさんすけ、かまのふた。 |
「集成 240 三枚の護符」 |
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