32 擂粉木の音と掃く音のきらいなじさま

 むかしあったけど。
 あんまり仲のええぐないじさまたちいでやったど。そして、
「お前、まず、一番、何きらいだ」
 て、そういうたど。そしたら、意地悪じさまは、
「おれは、朝げ擂粉木で味噌する音と、座敷掃く音が大嫌いだ」
 て、そういうど。一人のじさまは、
「おれは、小判は大嫌いだ」
 て、そういうたど。そうしたら、意地わるい方は朝げ早く起きで行って、朝げの座敷掃く音きらいだという家さ行った。座敷ざぁざぁ、ざぁざぁと掃いて、そして擂鉢さ味噌入っで、がえろがえろとすったど。そしたば、
「いや、恐っかない、恐っかない。嫌いだからはぁ、やめて呉ろ、やめて呉ろ」
 て、蒲団さもぐったど。じさ、ええ気持で帰って来たど。そうしたら掃がっだ方のじさまは、別な方のじさまのどさ、自分の金、ありったけ持って行って、窓から、「小判だ」て、投げ込んだど。
「恐っかねから、投げねで呉ろ」
 て。ありだげ投げて行ってやったど。むかしとーびん。


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