27 福の神

 むかしあったけど。
 あるとき、福の神さまが、そこらのええ家をのぞき見して歩ってたど。
 そしてある家の夕飯どきであったど。今のように電気釜などない、鍋で炊く時代なもんだから、御飯(おまま)煮立ってくっど、そっちふくれあがったり、こっちふくれあがったりするもんだから、飯箸(ままばし)でかきならすわけだ。
 そして、こんど、どのていど、やわらかいか、固いか調べるなな、それ、こんど一人のおかみさんは、はさんで一粒の御飯つぶしてみて、また元の鍋にもどしたど。
 そして、隣家さ行って、また見たど。そしたば、そこのおかみさんは、箸でやってだな、一つぶとって、ふにゃふにゃと食べてしまったど。
「こんな不精な家さは立ち寄らんね」
 て、さっきの、つぶして返した家さ寄んなねって、神さまはそこの家さ寄ってあったど。
 んだから、たとえ人いねったても、不精なことするもんでないど。
 むかしとーびん。ぴったりさんすけ釜の蓋、灰で磨けばええ銀玉、なぁ、さんすけふんはい。
「集成 199系 大歳の客」
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