20 二十四孝むかしあったけど。一人の親孝行な息子、毎日、仕事に行って帰りには酒買って来(き)い来(き)いしたど。父親、酒好きなごんだから。 そしてある日、働き少なくてはぁ、酒買って来らんねがったど。そしてヒサゴ(ふくべん)持って行くなだども、 「困ったこれ、酒買えば米買わんねし、今日は稼ぎ少なくて」 て思って来たらば、滝どんどん、どんどんと流れでる滝の傍まで来て考えたごんだど。 「この水、酒だったら、どんなに仕合せなんだかなぁ。まず仕方ない、水でも一回飲んでみっか」 と思って飲んだど。そしたば酒の味すっずもの。 「いや、これは神さまのお授けだ」 と思って、そのフクベンさ水汲んできたど。そして、 「おどっつぁ、今帰ったぜ」 て、そしてそれ飲ませてみたらば、やっぱり酒であった。 「いや、今までにない、うまい酒、にさ、買ってきて呉っだなぁ」 て、喜んで飲んだずも。そしてはぁ、それ憶えて毎日はぁ、 「これ、あしたも汲んでも酒なんだかなぁ」 と、次の日も行って汲んでみたば、やっぱり酒だすも。そしてはぁ、毎日上がりにその酒買うので、滝の水汲んでくるもんだから、暮しも楽になって、父親もええ布団も着られるようになってはぁ、仕合せに父親ばも安楽させて死なせてやったけど。むかしとーびん。 |
「集成 154 酒泉」 |
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